JR東日本「伊豆クレイル」が持つ4つの潜在力 首都圏に近い新たな観光列車はアイデア満載

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車内では女性に人気の有名フレンチレストランのシェフが監修した料理が出されるほか、伊豆エリアにちなんだ飲食も販売される。

1号車は海側の席が窓に面した配列

内装は、1号車は海側の席を窓に面した配列として、山側の席は床を海側の車窓が見やすいように10センチメートル程度底上げした。また、3号車は全席が海側に面したコンパートメント席。各部屋にはのれんを掛けることで、個室間を演出する。2号車は物販を行なうカウンターとパブリックスペースで構成される。デジタルサイネージやショーケースが設置されているが、このスペースで観光イベントなどが行なわれる可能性もある。

これらのデザインは外部委託ではなく、JR東日本のグループ会社が行なった。おひざ元のJR東日本横浜支社でもデザインを出し合ったという。列車のお披露目から運行開始まで2カ月以上あるが、「運転士の訓練に時間をかける」(JR東日本)。同列車は伊豆急行の路線にも乗り入れるためだ。

他の観光列車にはない可能性

3号車はコンパートメント席

ここまで見ていくと、JR東日本の特色ある観光列車の一つにすぎないようにも思われる。しかし、「伊豆クレイル」は他の観光列車にはない4つの可能性がある。

第一に挙げられるのは、伊豆クレイルは女性をターゲットに開発された観光列車だということだ。

JR東日本のほかの観光列車はどうか。たとえば福島エリアを走る観光列車「フルーティアふくしま」は、「走るカフェ」を基本コンセプトとし、車内でオリジナルスイーツやフルーツドリンクを提供する。この列車も女性客がターゲットのように思われるが、明治大正時代の西洋モダンを意識したという外観は女性向けには見えない。一方で、「伊豆クレイル」ではプレスリリースで「特に女性を意識」していると銘打っており、内装、外観に女性らしさを強調している。

観光庁の「旅行・観光消費動向調査」(2013年)によれば、国内旅行のうち「観光・レクリエーション」の項目を男女別で見ると、宿泊旅行、日帰り旅行とも女性が男性を上回る。その意味では、伊豆エリアを走る観光列車を女性向けに仕立てる戦略は間違っていない。つまり、マーケット規模としても大きい女性の鉄道利用を促すために、女性を意識した列車の投入は今後ますます増えていく可能性がある。

第二は首都圏に近い伊豆エリアに観光列車が投入されたという点だ。首都圏に近い観光地は伊豆だけなく、房総半島や奥多摩などいくつもある。つまり、将来はこうしたエリアを走る観光列車が生まれる可能性がある。

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