「騰落率」のカラクリに注意 REIT型投資信託の注意点

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日本国内で運用されている株式追加型で毎月分配型の投資信託について、8月末時点における純資産残高の上位20位を見たところ、そのうち10本の分配金が前年同月比(つまり2011年8月比)で低下していることがわかった。さらにそのうち5本は国内外のREIT(不動産投資信託)へ投資するタイプであった。

 その5本とは表にある純資産残高で5位・6位・9位・12位・16位のファンドだが、その分配金再投資後の基準価額の1年間騰落率はいずれも15%前後という高さで、一見すると良好な運用成績である。つまり運用成績は好調でも分配金は引き下げられたのである。

 これまでのバブル経済崩壊後の超低金利が続く中にあって、毎月分配型の投資信託は定期的に分配金を受け取ることができる金融商品として人気を集めてきた。今や日本の投資信託の約4本に1本は毎月分配型となっている。それほどにまで毎月分配型が浸透するにつれ、投資家としても毎月同じ額の分配金が支払われることを半ば当然と思い込んではいなかっただろうか。
 

 だが言うまでもなく、預貯金の利息とは異なり、投資信託の分配金は決算の結果として投資信託それぞれの分配方針にのっとり支払われるものであり、運用する投資信託委託会社の判断によって増減や見送りもありうる。今回の分配金引き下げはそのことをあらためて示すものだろう。

 それにしても、一見すると良好な運用成績でありながら、なぜ運用する各社は分配金の引き下げへ動いたのだろうか。それは、純資産に分配金を留保することにより、基準価額の水準そのものの回復を促すためであるとみられる。

 運用会社のホームページなどでは通常、運用成績としては分配金再投資後の基準価額の騰落率が掲載されている。だが、たとえ分配金再投資後の基準価額の騰落率が高水準でも、分配金として多くが支払われ流出してきたならば、その分だけ運用するうえでの元本である基準価格そのものの水準は目減りしている。運用会社としては、基準価額そのものの目減りを防ぎ回復させるための一策として、純資産に分配金を留保するのである。

投資家としては、分配金がどうなるのかを考えるためにも、こうした騰落率のカラクリを見抜いたうえで、分配金再投資後の基準価額の騰落率だけではなく、基準価額そのものの動きも見る必要がある。

(協力:リッパー・ジャパン)

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