コーセー「雪肌精」、爆買いに頼らない新戦略 百貨店でも販売、高級路線へ磨き直し

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雪肌精のグローバルキャラクター、新垣結衣さんと小林一俊コーセー社長(3月1日、記者撮影)

近鉄百貨店に導入したのと同様のカウンターは、中国をはじめとしたアジア太平洋の海外店舗約10店にも導入する。広告キャラクターも、日本同様に女優の新垣結衣さんを起用する予定。雪肌精のブランド価値を世界的に統一し、全世界で販売を伸ばしていこうという戦略だ。

中国は今、EC(インターネット販売)経由で物を買うことが全盛。コーセーも実店舗を縮小しつつ、EC売り上げ比率を高めている。それにも関わらず、ここに来て実店舗への投資を行うのは一見矛盾のようにも思えるが、百貨店カウンターでブランド力をアピールできれば、ECでの売り上げにもプラスの効果が見込めるというわけだ。

インバウンド需要の減速に備える

コーセーがこうした施策を行う背景には、中国経済の減速により、インバウンド需要の先行き不透明感が高まってきたことにある。今のところ、同社のインバウンド売上高にとりわけ減速感は見られない。それでも、小林一俊社長は中国人観光客の買い物に変調を感じているという。雪肌精やアルビオンといった中・高価格帯の人気は変わらず高水準だが、それでも最近はアイシャドーやシートマスクなど、単価の低い商品へ人気がシフトしてきたというのだ。

さらに4月8日からは、中国政府が日本から中国への並行輸入品に対し、一部税率を上げるという政策も開始。この影響で、日本の店頭で大量に商品を購入し、現地で売り捌いていた転売業者の動きも、抑制される可能性が高い。こうした状況下で、インバウンド需要が多少落ちても、それをカバーできる仕組みを用意しておく必要があるのだ。

同社は、今2017年3月期のインバウンド売上高を、前期よりも約10億円低い150億円程度と予想するが、先行きは極めて読みにくい。これに一喜一憂するリスクを取るよりは、中国人向けの売り上げは中国で立てる、という整理をしたコーセーの決断は堅実だ。あとは、この現地政策が、中国人に受け入れられるか。そして日本での雪肌精ブランドの価値をもくろみどおりに高められるかにかかっている。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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