錦織圭を育てたコーチが見た「天才という病」 なぜ有名選手が続々と不祥事を起こすのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さて、正しい方向に導いてくれる指導者は誰かと考え、すぐに頭に浮かんだのが柏井正樹さん。目下、男子テニス世界ランキング6位(4月25日現在)、日本人初のグランドスラムが期待される錦織圭を5歳から13歳までの8年間指導した人だ。

錦織圭の「育ての親」はどう見たか?

柏井正樹さん

バドミントン男子でリオ出場が確実視されていた桃田賢斗選手(21)と、ロンドン五輪で日本代表だった田児賢一選手(26)が東京都内の違法カジノ店でバカラ賭博をしていた問題。所属先のNTT東日本が開いた記者会見を、柏井さんもテレビで観たという。

そのすぐあとに開催された島根県の小学生から高校生を対象にした強化練習会で、県テニス協会の西村覚(さとる)理事長が、県の選抜選手である小中学生に問いかけたそうだ。

県協会では、強化選手やその保護者を対象にドーピング講習会を開催するといった取り組みをしている。

「あのバドミントンの事件、どう思う?なぜオリンピックに出られないんだと思う?」

それぞれ「うーん。悪いことをしたから、かなあ」と首をかしげている。そこで、西村理事長は「じゃあさ、もう1回、家で親とか兄弟と話してみてごらん。そして、もう一度僕にお話してくれるかな」と呼びかけた。

「どうもいけないことをしたらしいという認識はあるけれど、子どもだけにそんなに深い答えは出なかった。だから、もう少し家族といろいろ話して深めてほしかったと、西村さんはおっしゃっていました。すごくいいことですよね」(柏井さん)

 柏井さんも、選手にいろんな話を聞かせる。

「ジョコビッチとかフェデラ―ってさ、すっげえ稼いでるよな」
(うんうん、と選手笑いながらうなずく)

「でも、あの人たちさ、ただ儲けてるだけじゃないんだぜ。貧しい人とか恵まれない人に向けた基金とかつくってるの。世の中のために自分が何ができるかをいつも考えてるんだぜ。規模はいろいろ違ってくるけどさ、トップの選手って言うのはそういうことを考えられるヤツなの」

また、前出のような県や中国ブロックの選抜選手にも「強けりゃいいわけじゃない」ことを伝える。

「みんな、ここに来てるのは自分が強いから選ばれて来てるよね。でも、選ばれているけれど、こんなふうに強化練習するにあたって会場とかいろんな費用がかかるよね?それってどこから来るの?みんなが顔も知らない一般の人たちの登録料から。そうだろ?周りが支えてくれているから、君たちは何の心配もせずにテニスに打ち込めるんだよ」

次ページ「二面性」を育てているか
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事