アップルの「幸せすぎる黄金時代」は終わった

これからは「模索の時代」が始まる

おそらく、年末の売り上げ不振からの販売施策が今年になって進められたことや、日本の携帯電話事業者が乗り換え支援のキャッシュバック廃止を発表したことに伴う駆け込み需要などが、影響しているのではないだろうか。

今回の減収が一時的な”踊り場”なのか、それとも後退期への突入を示すのかを判断するのは、まだ時期尚早かもしれない。しかしながらここ数年は、かつてのように消費者を驚かせる新製品を出せていなかったことも事実だ。

アップルのたたき出す売り上げと利益は、他社に比べて桁違いに大きい。不調を名指しされるiPhone事業も、追いかけるメーカーが背後に見えているわけではない。そして、アップル自身も、現状に対して手をこまねいて見ているだけではない。

「iPhone SE」の需要はあるが……

たとえば、注目したいのはiPhone SEである。第2四半期における売上高にiPhone SEはいっさい含まれていないが、iPhone SEはコンパクトでリーズナブルなiPhoneを求める層に人気を得ている。公式な数字はまだ出ていないが、日本では大手流通が数万台単位での受注残を抱えているという。

ただし、iPhone SEの単価はiPhone 6Sシリーズよりも安い。iPhone SEの品不足傾向は、本来はiPhone 6Sシリーズを購入するユーザー層がiPhone SEを選ぶようになっているということだ。だが、そうなると、金額ベースでの売り上げが低下してしまう。

それでもiPhone SEがアップルにとって重要な商品なのは、(日本市場ではガラケーからの置きかえ促進という意味もあるだろうが)グローバルではアジア、中東、アフリカで増え続けている中産階級の消費者から、リーズナブルでパワフルなiPhoneが求められているからだ。すなわち、これまで高価すぎてiPhoneに手が届かなかった地域の消費者を、アップル側へと巻き取っていく可能性をもっている。

OECD(経済協力開発機構)によると、現在は世界人口の24%が中産階級に属しているのに対して、2020年には41%まで急増。現在は18億人の中産階級が32億人にまで増える。アップルが、この急増する中産階級を意識しているのだとすれば、iPhone SEを戦略的に用いることでiPhoneユーザーを増やせる余地がある。

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