アップルの「幸せすぎる黄金時代」は終わった これからは「模索の時代」が始まる

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ただし、iPhoneの高性能化とともにユーザーは、現行製品にあまり大きな不満を持たなくなってきている。機能や使い勝手、デザインやディスプレーなどで、新しい提案をしていくことが難しくなっており、必然的に買い換えサイクルの長期化が始まるだろう。iPhone SEは品質の高い中級機だが、それがiPhone市場の減速をリカバーできるかと言えば、現実には難しいと予想する。

つまり、アップルの今四半期決算の結果は、アップル自身の問題というよりも、急速に普及が進み、市場開拓が新興市場にまで伸びたスマートフォン市場の状況を投影したものと言えるだろう。

これまでが幸せすぎた

これはティム・クックCEOの「この1年に15社を買収した。大型買収もあり得る」という決算発表における言葉にも表れている。

アップルがVR(仮想現実)やEV(電気自動車)に関連したエンジニアを次々に雇い入れていることを知らないシリコンバレーの住人はいない。すでにアップルは次を見据えた投資を始めていることは間違いない。スマートフォン市場の成熟が進んだ後もアップルが成長戦略を描くためには、新たな業界への挑戦を余儀なくされているのである。

アップルはポータブル音楽プレーヤーや携帯電話を「再発明」することで既存市場を劇的に変えてきた。しかし、今はどの分野をどのように「再発明」するか、模索を続けている段階だろう。

2007年のiPhone投入からここまではスマートフォン市場の世界的な成長により、進むべき道筋が明確に見えていた。しかし、これまでが特殊で、あまりに幸せすぎた期間といえるかもしれない。

何がアップルの将来を支える選択肢となるのか、今後は模索しながらの歩みになる。その間に大きな失敗も演じるかもしれないが、次なる成長に向けて大胆な手を打てるかどうかが問われる。これから正念場ともいえる数年が始まる。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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