米国では、なぜ自殺率が増え続けているのか 10~14歳女性の自殺数は30年で3倍に
自殺が増えた原因は解明されていない。ラトガース大学の社会学教授で中年層の自殺を研究しているジュリー・フィリップスは、社会の変化が関与しているとみている。特に教育水準の低い米国人の間で婚姻率が低下している一方で離婚率は上昇しており、社会的な孤立が広がっているという。フィリップスの2005年の調査によれば、中年層では独身男性の自殺は既婚男性よりも3.5倍も多く、女性の場合は2.8倍だ。
助けを求めにくい中年男性
ベビーブーム世代の教育水準の低い白人男性は、社会的・経済的な先行きを不安視していることも要因になっている可能性があるとフィリップスは指摘する。「男らしさと自立」が美徳とされた時代に育った彼らは、助けを求めることに抵抗を感じやすい。「このグループは助けを求めるよりも、自分の絶望感に自己破壊的な方法で対処しようとする」
自殺増加の原因としてもうひとつ考えられるのが経済だ。米国疾病予防管理センターの疫学者アレックス・クロスビーが1920年代の不況と自殺の関連性について調査したところ、景気が悪化したときに自殺率が最も高かった。米国の現代史上、最も自殺率が高かった年のひとつが大恐慌の最中の1932年で、10万人当たり22.1人と、2014年より70%も高い。
これは25~64歳まで全般的にみられた傾向で、「一貫したパターンがあった」とクロスビーは言う。「経済が落ち込めば自殺は増え、経済が上向けば自殺は減った」
しかし、今回の政府の統計では、対象期間の後期は失業率が減少しており、経済が自殺に及ぼす影響を疑問視する専門家もいる。
男女の自殺率の差が縮まっているのは、女性の自殺率が男性よりも急速に上昇しているためだ。だが、それでもなお男性の自殺率は女性の3.6倍におよぶ。また、高齢者の自殺率は低下しているものの、75歳以上の男性の自殺率はすべての年齢層で最も高い。2014年は同じ年齢層の女性が10万人当たり4人なのに対し、男性は38.8人にのぼった。
(執筆:Sabrina Tavernise記者、翻訳:前田雅子)
© 2016 New York Times News Service
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