サマンサタバサ、不振のアパレル事業にメス やっぱり本丸の女子向けバッグに回帰

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前期は35%の営業減益だった。今期は増収増益への復活を目指す(記者撮影)

実際、2016年2月期のアパレル事業は10億円程度の営業赤字(構造改革費用も含む)だったが、今回の不振ブランドの退店効果で、2017年2月期は通期黒字化を視野に入れる。旧ブランドの閉鎖を進める一方で、ルミネと協業で展開する、好調の新ブランドに経営資源を集中する。

本業は堅調だ。2016年2月期は、バッグやジュエリー事業を展開する単体決算でも、前期比11%減の37億円と営業減益だった。しかし、CMなどの広告宣伝費や出店費用の販管費が先行したのが主因であり、主力のバッグ事業は、既存店売上高で前期比16%増を記録した2015年2月期と、ほぼ横ばいの高水準が続いている。

「サマンサタバサのバッグは、(1990年代の)ブランド立ち上げ当初は1万2800円が原点だったが、いまでは3万8000円から4万8000円が一番の売れ方になっている」(サマンサタバサジャパンリミテッドの寺田和正社長)。合成皮革から国産皮革を使用した高品質バッグへの転換が当たり、単体で11%という高い営業利益率をあげている。

三越伊勢丹から郊外SCまで手広く

三越伊勢丹向け新業態の「ラプリュム」では、10万円台の高級バッグを展開する一方、1.3万円から1.8万円の「サマンサベガ」業態や、7800円から9800円の「サマンサ&シュエット」業態について、ファッションビルや郊外ショッピングセンター(SC)で出店。10代学生から40代主婦まで客層を広げる。2016年2月期の大幅下方修正の反省を受け、2017年2月期の営業利益見通しは、前期比5億円増の26億円とやや慎重。もっとも、出店が続くバッグ事業の収益力は底堅く、アパレル事業の改革効果が出てくれば、さらなる営業利益の上積みも期待できよう。

振り返ると、”バッグ一本足”の収益構造から脱却しようと、過去にたびたびM&Aや新規事業を仕掛け、手痛い火傷を負ってきたのも、また事実だ。事業の選択と集中によって、今度こそ飛躍を果たせるか。これで3度目の事業改革となれば、投資家の目は一層厳しくなるに違いない。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年4月から再び『週刊東洋経済』編集部。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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