タックスヘイブンの香港は国際圧力に従うか パナマ文書で窮地も、「中国ルール」を主張へ
時をさかのぼること2009年、スイスのプライベートバンク大手UBSが米国での脱税幇助を認め、巨額の罰金を支払うとともに顧客情報を提供したことがある。この事件以降、オバマ米政権と米司法・税務当局はタックスヘイヴンを利用した税逃れに厳罰で臨むようになり、スイスのプライベートバンクの中には罰金によって廃業を余儀なくされるケースもあった。
今回、プーチン大統領や習近平国家主席などの親族・関係者が設立した法人をめぐっても、米国との間で神経戦が繰り広げられるだろう。どの金融機関に口座を保有しているかといった情報を米国の情報機関などが入手すれば、米国内の資産の差し押さえや、情報の一部をリークするなど、さまざまな形で圧力をかけることが可能になる。
タックスヘイヴンについても、OECD(経済協力開発機構)による規制強化がさらに強まるのは間違いない。情報開示に非協力的な国は、"ブラック認定"されることになる。
香港は「中国ルール」を主張か
微妙な立場にあるのが中国の特別行政区である香港だ。中国政府は香港が"ブラック"と見なされることは避けたいだろうが、国際ルールに厳密に従うかは不透明だ。香港は、シンガポールと「アジアの金融のハブ」の座を争っており、規制の柔軟な解釈が国益に資すると考えれば、"中国ルール"の主張を躊躇する理由はない。
また、国際的な規制の強化によって、近隣を窮乏化させる「無税国家」は許されなくなっても、各国の税率が異なるため、それを利用した合法的な節税スキームを考案することは可能だ。グーグルやアップルなどグローバル企業の租税回避が問題になったが、そこに登場するアイルランドやオランダはタックスヘイヴンではない。
問題の本質は、グローバルな金融市場が一つなのに、各国の主権によって異なる税制が並存していることにある。この根本的な矛盾が解消できないかぎり、国際税制をめぐる不公平感は今後も残り続けるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら