奨学金が支える「Fランク大学」の葛藤と不安

1300万円のハンデを負って通う価値はあるか

22歳の時点では、どのような形で働いても、それなりの金額を稼ぐことはできる。しかし、短くない人生。定年といわれる年齢まで、継続して稼ぐことは簡単ではない。聖学院大学における、正規社員としての就職率は7割程度で、2割強はいわゆる非正規雇用としてのフリーターだ。このランクの大学だと、どこも似たような数字になる傾向が強いという。学生が在学中から、自分の将来や先々の見通しをイメージすることもまた、簡単ではないようだ。

こうした現実をみる中で、柴田教授は、学生が奨学金で借金をすることに、唯一希望を感じる点があったと語る。それは、人生に計画性を持たせるきっかけになる、ということだ。

「借金というのは辛くて、もちろんないほうがよいに決まっている。しかし、学生にただ漠然と『進路を考えなさい』と言っても無理。借金問題で考えるきっかけが出てきた時に、ぐっと捕まえて意識させないと考えてくれない」。

そこで聖学院大学では、高校生向けに「進学にまつわるお金の話」を作成し、高校や学内で無料配布している。このパンフレット、ただ単に奨学金の制度を説明し、大学入学を促すものとは違う。同冊子では「そもそも、なぜ大学に進学するのか」から問い直して、進学の是非について家族で話し合うことを提言している。

大学進学と高卒就職の差は、1300万円

「お金の話」は学生にも分かりやすい

具体的な内容はどうなっているのか。大学に進学すれば、4年間で約500万円の学費がかかること。高校を卒業して働けば、年間約200万円、4年間で800万円稼げること。大学卒業の22歳の時点で、実に1300万円の差が生じることになること。こうした現実を、具体的な数字を出して伝えている。

また、多くの企業が、「求める人材 大卒以上」としており、大卒資格がないと求人の応募もできないということを指摘しつつも、「大卒学歴の有利さを発揮できるのはどんな大学生活を送ったのかという本人の努力も大切なことです。大卒であれば、誰でも安定して高賃金の職につけるわけではありません」と明言している。

奨学金の貸与事業を行う、日本学生支援機構の遠藤勝裕理事長も、「最近の学生やその親御さんは、大学を出さえすれば、社会人としても幸せになれる、という形に発想が逆転しているのではないか」と指摘していたが、この文面を見る限り、同じような懸念を大学としても持っているということだろう。

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