熊本地震で強まる消費増税「延期」予想 副作用の懸念も

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ニッセイ基礎研究所・経済調査室長の斎藤太郎氏は、地震発生以前から5兆円規模の補正予算は組むと想定してきた。今回の災害復旧費用が上積みされれば、全体で10兆円超の歳出となる可能性があると見通している。

菅義偉官房長官は18日の会見で、地震発生で消費税率引き上げ時期の判断に影響があるかどうかについて「今の時点で答えるのは控える」と言明。これまで何回も言及してきた延期のための2つの条件を明示しなかった。

景気変調、税収増シナリオにリスク

だが、足元の景気動向に変調の兆しが見え、過去3年間のような税収増を見込めるのか、不透明感が漂ってきた。そこに消費増税の再延期が重なると、膨張する歳出を賄うだけの歳入を見込めない状況に陥るリスクが増大しかねない。

菅野氏は「不透明な世界経済、円高継続の可能性など、法人税収が昨年までのようには行かない要素がある」と予想する。

一方、安倍首相が重視する「一億総活躍社会」プランによる子育て・介護支援での追加対策は、歳出を急膨張させる要因だ。

しかし、今回の地震で企業収益が圧迫され、法人税収が伸び悩めば、歳出と歳入のギャップは拡大するばかりとなる。

実際、阪神淡路大震災の発生した1994年度は、前年度から3兆円以上の税収落ち込みとなった。

仮に消費増税が延期され、大規模な経済対策が実施された場合のリスクについて、菅野氏は「日本国債への信認低下が、海外でも話題に上るようになっている。邦銀にとって、外貨調達に支障が出る状況にもなりかねない」と述べている。

 

(中川泉 編集:田巻一彦)

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