熊本地震で強まる消費増税「延期」予想 副作用の懸念も
また、過去のケースでは、鉱工業生産への影響は長期化していない。一部のシンクタンクでは4月の生産が震災がなかった場合に比べ、1%程度下押しされるとの予測を出した。
内外から注目されているサプライチェーンへの影響に関しても、東日本大震災の場合でも、1カ月後に6割、半年以内に約9割が復旧した。
だが、内実はより深刻とも言える。中長期的には海外への生産拠点の移転が相次ぎ、生産は2010年の水準に戻っていない。
市場では「11年の東日本大震災から5年しか経過していないのに、大地震が発生した日本のリスクを指摘する声が海外勢からも出ている」(国内銀行)という。今回の熊本地震をきっかけに、生産空洞化が再び加速するリスクを指摘する声がある。
停滞している企業や消費者のマインドが、地震をきっかけに冷やされるリスクもある。内閣府の景気ウオッチャー調査の結果を振り返ると、震災があるたびに同調査のDIは、判断の分かれ目となる50を割り込んできた。中越地震の際は、2カ月後の調査で「行楽意欲の減退」がDIを押し下げと分析。東日本大震災後も自粛ムードが長引いた。
注目される安倍首相の判断
さらに注目されるのは、安倍晋三首相の経済運営への影響だ。特に来年4月に予定している消費税増税の判断は内外の関心を呼んでいる。
安倍首相は、予定通りに実施しない場合の要件として、1)リーマンショック並みの経済悪化要因の発生、2)東日本大震災のような自然災害の発生──を挙げていた。
JPモルガンの菅野氏は、今回の熊本地震を受け「消費増税延期の条件が発生してしまった」と指摘。「経済対策の規模も、財政再建派を説得して拡大することになるだろう」と予想し、増税延期と10兆円規模の大規模経済対策の組み合わせもあり得るとみている。