熊本地震の支援に台湾がいち早く動いた事情 「震災外交」深まる日台、苦々しさ抱える中国

✎ 1〜 ✎ 32 ✎ 33 ✎ 34 ✎ 35
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

日本と台湾との災害時の相互支援は、特に2011年以降、もはや被害の程度や支援のニーズとは別の次元で、相互依存的な側面、互いに関心を抱き合う共同体的な側面が生じている。そのことは、「頑張って台湾を(あるいは日本を)支援しないと、世論からもバッシングを受ける」という、ある種のプレッシャーも政治家に与えている。

内心「苦々しい」ものの、介入できない中国

プレッシャーと言っても、それは決して不健全なものではない。お互いを思いやりたいという世論を政治がきちんと受け止めるという、民主主義が健全に機能した結果と言うことができるのではないか。

日本と台湾の地震のたびに深まる「友好」に対して、中国は、いまのところ明確な態度を表明していない。とはいえ、政府レベルでは内心、苦々しい思いをしていることは想像がつく。

だが、「人道」という大義名分がある以上、こうしたケースで何らかの介入を行うことは、さらに自らを苦境に立たせる可能性がある。それも分かったうえで中国は黙っているはずで、深まる一方の日台間の「震災支援の絆」の前に、当面は打つ手を見つけ出せないだろう。

野嶋 剛 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

のじま つよし / Tsuyoshi Nojima

1968年生まれ。上智大学新聞学科卒業後、朝日新聞社入社。シンガポール支局長、政治部、台北支局長などを経験し、2016年4月からフリーに。仕事や留学で暮らした中国、香港、台湾、東南アジアを含めた「大中華圏」(グレーターチャイナ)を自由自在に動き回り、書くことをライフワークにしている。著書に『ふたつの故宮博物院』(新潮社)、『銀輪の巨人 GIANT』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『台湾とは何か』(ちくま書房)、『タイワニーズ  故郷喪失者の物語』(小学館)など。2019年4月から大東文化大学特任教授(メディア論)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事