吉野家、再登板した「豚丼」にのしかかる重圧 客数回復の切り札として期待されているが…

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足元では牛バラ肉(ショートプレート)の価格は下がっているが、「価格は常に検討しているが、牛丼値下げの具体的計画はない」(河村社長)。

客数回復の切り札と狙っているのが、約4年ぶりに販売を行う「豚丼」だ。4月6日から販売しており、価格は牛丼より50円安い330円となっている。発売から1週間は300円のキャンペーン価格だったこともあるが、販売開始から6日で累計300万食を達成した。

また、来客数が少ない夜間帯への対応策として、牛煮込みや牛皿とアルコールを提供する「吉吞み」というサービスを2015年4月から導入している。対象店舗は現在350店まで広がり、今後は既存店の大半にあたる1000店以上に拡大していく計画だ。昨年に野菜が多く入った「ベジ丼」を発売したように、健康によい商品を訴求することで、新規顧客の取り込みも続ける。

ただ、ベジ丼、吉吞みとも客数減を補えるには至っていない。河村社長は4月11日の決算発表時点で、直近1週間の牛丼・豚丼以外を注文する客の割合は約1%だったと明かした。

中期経営計画は「種まき」の3年間

河村泰貴社長が発表した経営計画はかなり控え目な数字だった

会社は決算と同時に、今後3カ年の中期経営計画を発表した。最終年度の2019年2月期には売上高2100億円、営業利益60億円、国内外の店舗数3500店(2016年2月期は同2923店)と控え目な数字を掲げた。

河村社長は「この3年間は種まきをする期間。飛躍的な成長は目指していない」と説明する。

健康志向やブームを追い風に、はなまるうどんの急拡大は続くが、まだ同事業の売上高は200億円強に過ぎない。引き続き、売上高の約半分を牛丼事業が占めている構造に変わりはない。「種まきの3年の間」で、限界を迎えつつある牛丼のビジネスモデルを補う柱を育てることができるのか。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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