しかし、非人間的な苦難が核兵器によって加えられたことが明記されているので、核兵器に焦点があると説明することも可能だ。そうすればこれは非人道性のこととなりうる。なぜこのような玉虫色の表現にする必要があったかと言えば、「非人道性」を明記することを一部の国(たぶんフランスや米国)がのめないからだ。
「フランスや米国」としたのは日本の常識に反するかもしれないが、理由がある。フランスは核の理論については米国以上に原理主義的な傾向が強く、核兵器を防衛戦略の重要な柱として位置付けている限り、それを「非人道的」と否定することはできないと考えている。
もう1つの視点は、広島など被爆地を訪問すること自体が核兵器の非人道性を理解する最良の方法ということだ。今回の外相会議に出席した人たちは間違いなく核兵器の実相について理解を深めたと思う。
このことについて説明する前に、世界中の人々が核兵器についてどう思っているかを紹介しておきたい。
世界の一般的な考え方は?
多くの人は核兵器の威力についてある程度の知識を持っており、口では「核戦争が起こると人類は滅びる」などとも言うが、はたして本当にそのものすごさを理解しているかとなると、実はそうでもないのだ。
私は以前、軍縮大使であった関係上、世界の人たちが、と言ってもごくごく一部の人だが、核兵器のものすごさについてどのように理解しているか垣間見る機会が何回かあった。
ある時、欧州某国の軍縮大使と約2時間、核兵器の非人道性について議論した。その時につくづく感じたのは、その人の理解はわれわれとはあまりに違う、核兵器が非人道的だということを理解していないということだった。
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