ベール脱いだ“走る美術館"の「現美新幹線」 座席もキッズスペースもすべてがアート
「水面で揺れ動く物体をイメージしました」と、15号車のデザインを行った荒神明香氏が言う。列車がスピードを上げるにつれて、釣り糸で吊り下げられた花びらがゆらゆらと揺れ動く。まさに動く列車だからこそ可能なアート作品だ。
車両のシートもアート心にあふれている。デザインを行った松本尚氏は、トンネルが多い上越新幹線を逆手に取った。「トンネルを出たり入ったり。そのたびにカーテンの色が変わる」。トンネルを飛び出したとき、室内空間がパッと華やぐ。照明で工夫しているわけではない。乗客が驚くのは間違いない。「このような体験が、アートなのです」。
アーティストの監修による「キッズスペース」も設置された。子供がアートに触れることで芸術に親しんでもらうのが目的だ。また、カフェスペースでは魚沼産コシヒカリの米粉を使ったスイーツや燕市のこだわりの「つばめコーヒー」などが提供される。
列車デザインの枠を超える新幹線
「動く車内で人の移動により作品が痛まないか。その点には注意を払いました」と、JR東日本新潟支社の担当者は言う。ただ、各車両に展示される巨大なアートを目の当たりにすれば、気を付けて鑑賞しようというアート心も芽生えるに違いない。
ホームに滑り込んだ車両を見ると、その場にいた多くの乗客がスマホで写真を撮り始めた。「いままでの列車デザインの枠を超える車両を目指した」(JR東日本)。新幹線に足湯を設置した「とれいゆつばさ」にも驚かされたが、車両を美術館にしてしまうという発想も前代未聞。その意味では、現美新幹線そのものが現代アートといえるのかもしれない。
4月29日から上越新幹線の越後湯沢~新潟間を土日曜日、祝日を中心に運行する。当面は指定席および、旅行専用商品としての販売だが、7月以降は自由席も販売される予定だ。新しい新幹線に乗るだけでなく、これをきっかけに現代アートへの関心が高まれば一石二鳥だ。
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