「九段下駅ベビーカー事故」はなぜ起きたのか 車掌が目視での安全確認を怠った!

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では車掌は目視でチェックをしないのだろうか。車掌は列車が発車してからは、ホームでは窓から顔を出して、異常がないかチェックしている。九段下駅は直線のホームだ。「見通しが悪いということはない」(東京メトロ)。明らかに目視による安全確認を怠ったと言わざるを得ない。

非常停止の仕組みは機能したのだろうか。列車が動き出してすぐ、異常に気づいた列車内の乗客が車内の非常通報装置を押した。このボタンが押されると、列車が駅間にある場合は、車掌は列車を停めずにまずインターホンで乗客と会話をするが、列車がホーム上にいる場合は、真っ先に急ブレーキをかけて列車を停止させてから情報確認をする。急病人がいる場合など、列車が駅に停まっていたほうが対応しやすい場合もあるからだ。

非常通報装置が押されたとき、列車の一部はまだホームから離れていなかった。にもかかわらず車掌は急ブレーキをかけず、列車を走行させ続けた。

ホーム上にも非常ボタンがある。ホームにいた乗客も非常ボタンを押した。非常ボタンが押されるとホーム上に大きなブザー音が響き渡る。列車はただちに急停車して車掌は状況確認をする。しかし、車内の非常ボタンの対応に追われ気が動転し、急停止をためらってしまった。結局、列車は400メートル離れた神保町駅まで走り続けたというわけだ。

ホーム上には駅員はいなかったのか。九段下駅は、朝夕のラッシュ時は駅係員をこのホームに配置している。しかし平日の昼間の時間帯は無人。監視カメラがホームの状態を監視しているが、「常時監視というわけではない」(東京メトロ)。

ホームドアの設置が有効策

今回のトラブルの原因がヒューマンエラーであることは間違いない。ではヒューマンエラーを防ぐ仕組みはないのだろうか。方法として考えられるのはドアが挟んだ異物を検知する感度を高くすること。しかし、あまり感度を高めると、ラッシュ時にコートの裾や傘が引っかかっただけでも列車が発車できなくなり、逆に遅延の原因となりかねない。

今回は当てはまらないが、駆け込み乗車を防ぐホームドアの設置は有効な対策だ。しかし、九段下はホームが狭い上、柱が多い。ホームドアの設置は簡単ではないかもしれない。

九段下は直線ホームだが、東京メトロには湾曲して見通しが悪いホームもある。こうなってくると同じようなトラブルが再発しないとも限らない。

「車掌は決められた手順を守っていなかった。厳正に処分する」と、東京メトロは説明している。今回の一件を経験不足の車掌が起こしたトラブルで片づけるのではなく、再発防止策をきちんと講じることが必要だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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