改装開業は11月21日。阪急うめだ本店が不況に挑む秘策、「情報発信型」百貨店とは?

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10階は雑貨のフロア「うめだスーク」(スークはアラビア語で「市場」の意味)。「雑貨を中心に、クリエーターや作家の手作りの品なども展示する。全体の4分の1の売り場は1~2週間で商品が入れ替わるようにし、導線もあえて迷ってしまうような作りにして、散歩気分で発見する楽しみを提案したい。まったく新しい業態を開発したと思っている」(内山啓治本店長)と自信のフロアだ。「近年の百貨店は自分たちのもうかるものばかりに力を入れて、食品と衣類ばかりになってしまった。もうからないけど面白いものを、ところどころに混ぜていかないとダメだ。10階はそうした『面白いもの』の象徴となるはず」(椙岡会長)。

またバックヤードに関しても、当初予定していた売り場面積を4000平方メートル削る形で、従業員用の施設やスペースを拡充。全長4500メートルの業務用通路を設け、運搬業務の効率化を図るほか、業界初となる従業員専用のエスカレータ(地下2階~13階)も設置し、従業員にとっても快適な店舗を構想した。

今回のうめだ本店の増床改装。その全体コンセプトは「『モノ』リテーラーから『情報』リテーラーへ」だ。「いまやモノそのものは、世の中にあふれかえっている。われわれはモノに付随するモノ以外の価値、すなわち文化的価値を売りたい」。椙岡会長はそう狙いを語る。

阪急阪神百貨店では、今回の阪急うめだ本店に先立ち改装を迎えた、大阪・梅田、東京・有楽町のメンズ館や兵庫県の西宮店などで、モノを売るだけにとどまらない、情報発信型の店づくりを進めてきた。たとえば梅田および有楽町のメンズ館では、専属のスタイリストがコーディネート提案を行う会員制サービス「スタイルメイキングクラブ」を設置。着こなし方や手持ちの服との組み合わせを提案することで、すでに十分に服を持っている人にも購買意欲を提起する販売方法を実施。有楽町店ではこのサービスに伴う販売が好調で、5階の売り場を拡張するなど手応えをつかんでいる。

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