野村ホールディングス・出直しの勝算、海外リストラの荒療治

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格下げへの危機感

株式市場には半信半疑というムードが漂っている。この収益目標が報じられた直後の営業日である9月3日こそ、野村の株価は前営業日比6円高の264円となったものの、その後は頭打ち状態が続いている。国内証券2位の大和証券グループ本社の株価を下回ったままだ。

このタイミングで野村が収益目標を公表した背景には、経営陣に自社の格付けに対するシリアスな認識があったからこそだろう。

野村の格付けは現在、米ムーディーズ・インベスターズ・サービスで「Baa3」にとどまっている。もう一段引き下げられれば、投資不適格という扱いとなり、資金調達が厳しくなってもおかしくない。そのような事態を回避するには、自らが収益力強化のシナリオを明確にビジョンとして描き出して、そのシナリオどおりに走り切るしかない。いわば、新たに打ち出した戦略と収益目標には、「生き延びる」(吉川淳・グループCOO)という新経営陣が抱く危機感が表れている。

逆風下での厳しい船出となった新経営陣だが、野村の強みである危機感が行き渡ったときに強烈な営業力を発揮する伝統的な体質は失われていない。それを正しく機能させることができれば、険しい山道であっても登り切る可能性は高まる。その一方で、収益を拡大するために、現場に過度な負荷をかけるようなことになれば、インサイダー情報の漏洩のようなルール違反が再発することも否定できない。

野村は再生への第一歩を踏み出したばかり。収益改善と信頼回復へ向け、今後も重要な局面が続く。

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(浪川攻 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2012年9月15日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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