その可能性はほとんどないが、仮に米国が、何万というシリアの人々の人命を救うため、さらに対立を抑えるために断固たる行動を取った際の莫大な機会コストについては、誰も考えていない。リビアでは、米国による介入策の一つが結果的に、米国大使殺害に対する何万人ものリビア人による抗議デモにつながった。これが最終的には、国連安保理での中国とロシアの棄権、さらには欧米によるリビアへの軍事介入へもつながった。
米国は国際的責務を果たす必要がある
大統領選前に米国が動くことを期待するのは難しい。米国の行動を促すには、シリアを取り囲むトルコ、サウジアラビア、ヨルダン、カタールとアラブ首長国連邦が団結し、声高に米国のリーダーシップを呼びかける必要がある。外交のエキスパートであるニナ・ハチジャン氏とデビッド・ショア氏は最近、「責任の原則」と題して、大国には世界の基準を重んじ、国際的な問題を解決する責務があると論じたが、周辺国はオバマ大統領にこの責務を思い出させなければならない。
アラブ連盟は国連安保理が国際和平と安全保障の維持を放棄していることを問責すると同時に、周辺国の団結を促す必要がある。特に米国に対しては、シリア介入の際、オバマ大統領が「他国がステップアップできるような条件を整え、連携を進めなければならない」と語ったとおりの国際的責務を強く求めるべきだ。
悲惨さと激しさを増しているシリアでの内戦は、シリアの人々に何の希望も与えていないどころか、現状より悪い状況を招きかねない。今シリアに残された選択肢は、今後「悪くなる」か「もっと悪くなる」しかないが、リーダーはそれでも選択をしなければいけない。今のオバマ大統領は、シリアだけでなく、米国にも間違った選択をしている。
(週刊東洋経済2012年11月10日号) ©Project Syndicate
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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