中東和平を目指したオバマはどこへ行った

世界平和と中東攻撃、際立つその矛盾

シリア人無視の米国による選択

オバマ大統領は毎朝、米国人を殺害するためのありとあらゆる陰謀についてのヒアリングを中東アドバイザーから受ける。シリア政府軍の戦闘機を仕留めるのに必要な武器は、米国の旅客機を狙うテロリストへの攻撃にも有用だ。そこでオバマ大統領は、シリア内戦が何らかの形で終わるのを待つ、という消極的な選択をすることで、米国人が人命を失うリスクを引き下げようとしているのである。

また、別のアドバイザーはオバマ大統領に、たとえばトルコ国境の安全圏の拡張などを進めるには、シリア全土の対空防御を破壊しなければならない、と助言する。それにはダマスカス爆撃が必須だが、その結果、政府軍への支援が増す可能性もある。確かに少数の人命を救う意義はあるだろうが、あまりに多くの国が、別々のグループの反体制派グループを通じて代理戦争を行っている中では、米国による措置はこの対立構図を是正するのに何の意味ももたらさない。

さらに、周辺国がシリアに対して武力行使に出るには、国連安全保障理事会の承認が必要だが、この道はロシアと中国の拒否権行使によって閉ざされている。米国の有権者も、米国による中東でのこれ以上の軍事活動は望んでいない。

こうした展開や議論が意味するところを真剣に考えなくてはならないが、米国による判断は、シリア情勢にかかわるコストや利点などに基づいて、必ずしも平等とはいえない観点から下されている。ホワイトハウスの大統領執務室では、シリアの人々の観点からブリーフィングが行われることはないからだ。

シリアの人々が自由や民主主義、尊厳、平等を得るために銃弾の恐怖にさらされながら戦っているのを米国が横目で見ながら正当化している「裏切り」への代償が、判断材料になることはないのである。その代償とは、次世代を担う中東の若者たちが、米国に対してこじつけともいえるうわさや極端な主張などに基づいて、最悪なイメージを持つことだ。

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