「ビットコイン」の健全化で何が起きる? 放置から法整備へ、利用者の増加に期待の声

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実際に法改正で最も意義があったのはどの点なのか。森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士によると、「仮想通貨」の定義を定めたことが極めて重要だという。

「将来的には、金融商品取引法や貸金業法、保険業法などに、資金決済法に定められた仮想通貨を含める改正を行うだけで、迅速に法規制を展開できる」(増島氏)

今はまだニーズが顕在化していないが、先々、仮想通貨を使った貸し付けや資産運用、保険商品が必要とされる時代が到来するかもしれない。その際、速やかに法規制をかけることが可能となり、ビジネスを行う環境を整備しやすくなったのだ。

消費税がかかることに疑問の声

現金をビットコインに替えられるATM(撮影:尾形文繁)

しかし、日本では、まだ特有の課題がある。現状では、仮想通貨の取引には消費税がかかり続ける、という点だ。野口氏は、「仮想通貨に消費税をかけているのは、G7の中では日本だけだ。実質的には通貨と同様の機能を果たすものに、消費税をかけることは通常しない」と指摘する。

また、増島氏も、「今回はあくまで資金決済法の話で、消費税法には何ら手を加えていない。このままでは8%の手数料がかかる状態と同じで、事業者が日本に法人を作る意欲がなくなる」と、その問題点を強調する。

ほかにも、仮想通貨の問題としては、価格変動の激しさなどが指摘されている。対処すべき課題はまだ多く残されているが、今回の法改正は健全な市場創成に向けた第一歩といえるだろう。

「週刊東洋経済」2016年4月2日号<3月28日発売>「核心リポート04」を転載)

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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