シャープと破談のJDI、工場集約で生き残りへ 有機ELとスマホ以外の分野へ、投資を急ぐ
現在、JDIの売上高のうち、約4割は米アップル向けが占める。スマホ市場は成長が鈍化しようとも、今後も年間20億台ほどの需要が見込めるほど巨大だ。その中で、ハイエンド層をつかみ値崩れしないアイフォーンは、JDIにとって最優先ビジネスであることに変わりはない。
だが、アップルはアイフォーンのディスプレーに18年にも有機ELパネルを採用するとの観測が広がっており、取引維持のためには、有機ELパネルの量産体制を整備することが要求されている。
アイフォーンをはじめスマホのディスプレーには、主に液晶が搭載されている。ただ、有機ELは液晶とは異なり、曲げ加工ができるため、デザインの自由度が高く、次世代ディスプレーとして注目が集まっている。その量産には高度な技術を要し、スマホに用いられる中小型サイズで成功しているのは、現在、韓国のサムスングループのみ。
アップルは競り合うサムスンから部品供給を受けることに後ろ向きであるうえ、複数社から購買する方針を採っているため、現状で液晶パネルの供給を受けているJDI、シャープ、韓国のLGグループに量産を急がせているものとみられる。JDIは18年の量産化を目指すが、実現できなければアップルとの取引量を大きく落としかねず、量産技術の確立は急務なのだ。
スマホ偏重からの脱却もはかる
アップルとの取引維持は最優先事項である一方で、スマホ依存度の高さはJDIの泣きどころでもある。
売上高全体の約8割をスマホ向けが占めるが、スマホ市場は需要変動が激しく、業績は設立以来、乱高下している。今期は前年比4.3倍の営業利益220億円を見込むが、中国市場の減速を受け、第4四半期単独では営業赤字に転落する見通し。収益の安定化にはスマホ以外のディスプレー市場への拡販が必須だ。
新規ビジネス拡大へ、今年4月に組織再編を実施して専門部署を立ち上げ、スマートウォッチや医療向け、デジタルサイネージなど販路の多様化を急ぐ。今回の構造改革には、全社固定費を削減し、新規ビジネスや新技術への投資余力を捻出する狙いもあろう。
スマホ向けを維持しつつ裾野を広げ、次の成長につなげることができるのか。設立4年が経過したJDIは、試練のときを迎えている。
(「週刊東洋経済」2016年4月2日号<3月28日発売>「核心リポート01」を転載)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら