「君が代」が今まで滅びず生き延びてきた理由 「消極的な肯定」という言葉に尽きる

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もっとも、そんな彼らも「君が代」を批判しようという意識は乏しかった。先に「別にそのような気持ちはしない・不明」を選択した人々を対象にした「また『君が代の歌を聞くと、時代に逆行するような感じがしていやだ』という人がいますが、あなたもそのような感じがしますか、それとも、別にそのような感じはしませんか。」という質問には、61%が「別にそのような感じはしない」と回答している。積極的に肯定はしないが、だからといって否定もしない。そんな「君が代」に対する「消極的な肯定」の態度が見て取れる。

同年11月には、同じく内閣官房広報室によって、満20歳以上の男女1万人を対象にした「公式制度に関する世論調査」も行われた。ここでは、戦前育ちの世代が多いこともあってか、「君が代」に対する感情では、「尊敬または愛着」が59%でトップになった。ただし、「反感」は1%にとどまったものの、「特別な感情なし」は36%もあり、「君が代」に対する無関心も相当あったことがわかる。

「君が代」の良し悪しについては、やはり肯定的な「(単に)いい歌だ」が68%でトップ。これに無関心な「別になんとも思わない・不明」が23%で続いた。否定的な、「(単に)よくない」(2%)、「節はいいが文句がよくない」(5%)、「文句はいいが節はよくない」(1%)などの立場は、軒並み低い結果に終わった。

さらに、「君が代」が国歌のままでよいかという問いについては、「賛成」が79%。これに「賛成」と答えた者の71%は、学校の式などでの斉唱の可否にも「賛成」と回答。以上の結果を見る限り、少なくとも「君が代」絶対否定派が少数にとどまったことは間違いないといえる。

意味はよくわからないが、これでいい

次に、翌1962(昭和37)年12月に行われた「朝日新聞」による世論調査を見てみよう。この調査は、戦後の日本人が「君が代」を肯定しつつも、それが消極的なものにとどまったということを端的に教えてくれる。

「朝日新聞」の調査でもやはり「君が代」に対する肯定感は強く、85%が「君が代」を「よい歌」と答え、81%が「国歌のままでよい」とし、新しい歌に変えるべきだという意見には79%の人が「反対」と答えた。

ところが、そんな「君が代」に肯定的な人々も「歌詞はどういう意味か」という問いには、戸惑いを見せている。

「国家が長く栄えるように」との歌……22%
「天皇をたたえる」歌……………………15%
「天皇と国家、国民をたたえる」歌………8%
はっきりわからない…………………………8%
考えたことがない……………………………4%
その他とわからない………………………39%

「その他」を含むものの、無関心や不明との回答は全体で半数以上にも達している。当時はまだ戦前の教育や式典を体験した人が多かったにもかかわらず、この結果には驚かされる。国民の多くは、「君が代」に対して「意味はよくわからないが、これでいい」という態度を取っていたらしい。

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