JR高崎線の火災事故は、なぜ長期化したのか 全線再開まで3日もかかったトラブルの原因

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今回のトラブルでは、直通運転を行う上野東京ライン・湘南新宿ラインにも影響が及んだ(写真:tarousite/PIXTA)

だが、こうした碍子のメンテナンスという問題は、鉄道電化の歴史と共にずっと抱えられてきた問題でもある。

鉄道事業者としては、JR各社だけでなく、私鉄も含めた業界全体にノウハウのある問題でもあるし、何よりも碍子の製造に関しては、日本は世界最高の技術を持っている。長い時間かけて積み重ねてきた、劣化や汚損の発見ノウハウの原点に還ることが何よりも重要だろう。

その一方で、鉄道業界では、このような事故について想定は進んでいた。やや専門的になるが、今回の事故は「高抵抗地絡」という現象の典型的なケースと思われる。今回の事故だが、被害を大きくした最大の原因は「異常電流」が流れ始めてから通電が遮断されるまで時間がかかったことと考えられる。変電所にある「故障選択装置」や「高速遮断器」が間に合わなかったのだ。

想定と対策の研究は進んでいる

一般的に直流電化区間で、今回のように直流1500ボルトの「き電線」が鉄製の「はり」に接触し、更にコンクリートの柱などから地面に漏電した場合は、「電気抵抗の高い場所で短絡(ショート)」が起きたために、変電所では「電車や電気機関車が力行(モーターに電力を供給して加速)している場合の電流」と一瞬判別がつかない。

これを「高抵抗地絡」と言って、現場では激しい短絡(ショート)が起きているのに、変電所では分からないまま、従って通電の遮断ができないまま数秒が経過してしまうのである。

この現象が大事故につながることは分かっており、業界では鉄道総研などで真剣な研究が進んでいた。例えば、通常の電車・電気機関車の力行時の電流の流れ方と、高抵抗地絡の場合との波形分析を行うなど、判断と遮断の高速化を図るために様々な解析の作業が進んでいる。今回の事故を契機に、この技術の実用化が加速することを期待したい。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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