「共犯」の同盟史 日米密約と自民党政権 豊田祐基子著 ~丹念な調査によって裏と表のもつれを読み解く

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 「共犯」の犠牲となってきたのは、もちろん沖縄である。沖縄返還交渉において佐藤総理の密使を務めた若泉敬氏を引用しつつ、著者は言う。「断絶は……唯一の地上戦を経験した沖縄と決戦を回避した本土との間に生じている。より深刻なことは……断絶は戦後60年を経て縮まるどころか、むしろ拡大していることだった」。密約こそがこの断絶を覆い隠してきたのである。

冷戦の中で生まれた日米密約は、非核三原則や沖縄の返還、防衛費の負担問題などとどう関連してきたのか。冷戦の終焉はいかなる変化をもたらしてきたのか。

それなりの必要性と現実的な妥協としてスタートした日米密約が、なぜここまでもつれたままになったのか。政権交代が実現した今、本書は、日本の安全保障と外交の姿を冷静に見つめなおすうえで、まさに時宜を得た一冊ではないだろうか。

とよだ・ゆきこ
共同通信社記者。1972年生まれ。早稲田大政経学部卒、共同通信社入社。大阪府警、防衛庁、外務省など経て、現在日銀担当。2006年9月から1年、米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院、エドウィン・ライシャワー東アジア研究所客員研究員。

岩波書店/2940円/286ページ

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