「共犯」の同盟史 日米密約と自民党政権 豊田祐基子著 ~丹念な調査によって裏と表のもつれを読み解く
自民党政権がついに陥落し、民主党政権が誕生することになった。ちょうど、米軍による核の持ち込みにまつわる秘密取り決めがあったのではないか、という話題も世上の関心を集めている。
核兵器や基地をめぐる密約はあったのか、それはいったいどのような背景から生まれ、そしていかにして続いてきたのか。本書は、日本外交の基軸である日米安保体制について、開示された外交文書などの丹念な調査から、その裏と表のもつれを読み解く試みである。
岸総理が政治生命をかけて臨んだ日米安保条約の改定によって、1960年、日本防衛義務の明確化や内乱条項の削除など、日米対等を謳った新安保体制がスタートした。しかしその一方で、日本国内の基地使用と核兵器の扱いについて米側に限りない柔軟性を認めるための密約が結ばれた。
つまり安保改定は、米国の核の傘によって安全保障を担保されるという現実と、日米対等というスローガンや後の「非核三原則」といった表向きのストーリーとの間に抜きがたい矛盾を抱え込んだことを意味した。旧安保体制下の「自由な」基地使用を継続するために、「現行の制度」が米側の望みどおり温存され、日米対等の基礎となるべき「事前協議制」が骨抜きにされたことは、後々へと続く密約体制の出発点となったのである。
そしてこの密約体制は、歴代の自民党政権によって継承されてゆく過程で、政権そのものを守る手段へと変容していった。他方で、基地使用の既得権を守り、日本側からの財政支援を失うまいとする米側も、密約を密約のままで維持することに利益を見出してきた。著者の言う「共犯」とは、これを指している。