【産業天気図・鉄鋼】製造業向けに光明だが、建材はなお低迷。東アジアの増産も懸念材料で、雲は依然晴れず
こうした流れを受け、国内最大手の新日本製鐵<5401>は、今春の改修完了後も再稼働を先送りしていた大分製鉄所・第1高炉の火入れを8月に実施。国内2位のJFEスチール(未上場)は来春の稼働をメドに、休止中の倉敷・第3高炉の改修に着手した。また、同3位の住友金属工業<5405>も、和歌山製鉄所の新第1高炉を7月に稼働させるなど、減産緩和の動きが顕著になっている。
ただ、製造業向けが復調に転じた一方で、国内の建設向けはなお低迷が続いている。鉄骨資材に使われるH形鋼の在庫指標は8月が22万tと、4月(20.6万t)を底にして増加に転じている。また、建設用の普通鋼受注は7月が84.7万tと、08年11月(87.1万t)以来の低空飛行が足元も続いている。品種構成が建材中心の電炉メーカー各社は、東アジアの鉄鋼需要増に伴う原料スクラップのジリ高傾向も重なり、今後も苦境が続きそうだ。
さらに、10年初に予定されている現代製鉄の高炉稼働を筆頭に、東アジア各国で生産能力増強が進んでいることも懸念要因。需要回復を上回るペースで、海外各社が増産に走れば、改善方向に向かいつつある鋼材市況が再び軟化に転じるおそれもある。製造業向けを中心とした回復の一方で、鉄鋼業界を取り巻く環境は、なお余談を許さない状況が続いている。
(猪澤 顕明)
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