トヨタがカンパニー制で試す"次期トップ" 出戻り人事も活発化、社長級人材を複数育成
豊田社長は「もっといい車づくり」を叫び続けている。逆に言えば、これまで社内の都合が優先されて、「いい車づくり」を最優先できていないという反省がある。
従事も「いい車づくり」のために試行錯誤を繰り返しており、2011年には市場ニーズに沿った車両開発をしやすくするよう、地域への権限委譲を進めた。
2013年にはビジネスユニット(BU)制を導入。先進国を担う第1トヨタ、新興国を担当する第2トヨタ、レクサス、部品の開発・生産を集約したユニットセンターの四つのBUに分け、そのトップが迅速に意思決定を行う。さらに製品企画や生産技術といった機能軸の本部がBUと連携していくことを狙った。
「全部が成功しているわけではない。もう少しうまくいくと思った……」(幹部)。数年間での組織見直しには戸惑いの声もあるものの、より機能するための組織を模索する手は緩めない。
後継の経営者を育てる
今回の組織改正のもう一つの狙いは、次世代を担う経営人材の育成だ。
専務役員を各カンパニーのプレジデントに任命し、責任と権限を集約。それぞれ100万台から数百万台の自動車メーカーの経営者として経験を積ませていく。
近年、トヨタでは専務役員をグループ会社のトップに送り込み、経営者として鍛え上げる試みを始めている。“出戻り人事”も活発化させており、成果を上げれば、副社長クラスでトヨタ本体に舞い戻るチャンスを広げている。
2009年6月の豊田社長の就任から7年。創業家の金看板が使えなくなる次世代に備え、巨大企業を引っ張ることのできる社長級の人材を、複数育成しようとしているのだ。
「この組織改正を将来の正解にするのも、間違いにするのも私たち自身である」(豊田社長)。狙いどおりの成果を生み出せるかは、今後の取り組みにかかっている。
(「週刊東洋経済」2016年3月19日号<14日発売>「核心リポート05」を転載)
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