iPhone「ロック解除問題」は日本にも波及する アップルとFBI激突、"端末情報"は誰のものか

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理由として、鋭社会ゆえの鋭犯罪やテロに対する恐怖心から、「安全保障なくしてプライバシーなし」といった考えがあること、そして、FBIの求める1台のアイフォーンのロック解除が、ほかのアイフォーンにも影響しうることが理解されていない、という点が挙げられる。

目下、大統領候補の指名争いが続く米国において、共和党でトップを走るドナルド・トランプ氏も非協力姿勢を貫くアップルを「何様のつもりか」と非難し、製品のボイコットまで呼びかけている。

FBIは1台だけの事案だとしているが、実際にはアイフォーンのロック解除については、同様の請求が多数出されている。そのうち、麻薬取引に関する事件では、2月29日にニューヨーク州地方裁判所が「ロック解除をアップルに強制できない」として、司法省の請求を退けている。米国内の裁判所でも、判断が分かれているのだ。

日本のユーザーも無関係ではない

翌3月1日に米国議会で開かれた公聴会でも、両者の主張は平行線。FBIには捜査に取り組む姿勢への非難が集まり、アップルに対しても、対案を示せと注文がついた。

3月22日には、カリフォルニア州リバーサイドにある地方裁判所で、聴聞が予定されている。アップルはここでもソフトウエアの提供を拒否するとみられている。

個人や企業の情報保護か、それとも安全保障か。FBIとアップルの対立の結論は、米国製品を利用する世界中の人々にもそのまま波及する。アップルが不服従の姿勢を貫けるか。日本のユーザーも決して無関係でない。

「週刊東洋経済」2016年3月19日号<14日発売>「核心リポート01」を転載)

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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