「8割水没した街」の再生が注目を浴びるワケ 米ニューオリンズは東北復興の手本となるか

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ーー地域の中小企業支援も行っていますね。

私たちが活動する地域には125の中小企業がある。古くからあるステーキハウスと、それより古い高級レストランも数軒あるが、多くはこの10〜15年以内にできた。中には設立2、3年程度のところもある。

リフレッシュの始動や公園の新設で、この地域への関心も高まっている。人が喜んで集まってきて過ごしたいと思える場所になっているのは、地元企業にとっても心強い。人々がサイクリングをしに来たり通りのカフェにコーヒーを飲みに来たりする街を作ることが、中小企業支援につながる。

個々でやるより集まった方がインパクトは大きい

ーーそれによって、新たな雇用が生まれると。

実際に仕事も増えている。特にリフレッシュでは、カフェやキッチンのスタッフやオフィスでの業務、コーヒーショップの店員などを含めて200人ほどが職を得た。また、地域に新しい企業が生まれたことで、そこでも20ほどの仕事が生まれた。

ーー「リフレッシュ」のモデルは、米国だけでなく、世界でも注目されているようですね。

リフレッシュは確かにユニークで、こういうプロジェクトはほかにない。私たちのプロジェクトの基となっているのは、「コレクティブ・インパクト(集団的インパクト)」というコンセプトで、(コミュニティの)全体で動いたほうが、個々で動くより大きなことができると考えている。関係者が一緒になってそれぞれが得意なことに従事した方が、ずっと大きなインパクトを与えられる。それを可能にしたことが、リフレッシュのユニークなところだ。

ーー東北でも関心を持っている人がいるとか。

今回の来日では、東北各地を訪れた

興味を持っている人は少なくない。たとえば、(宮城県女川町のNPO法人アスヘノキボウ代表理事の)小松洋介氏は「女川でリフレッシュをやりたい」と言っている。彼は、地元の漁業関係者や地元自治体、コミュニティメンバーなど色々な人や組織をつなげようと頑張っている。昨年10月にニューオリンズに視察にやってきて、何か東北とリンクするものを感じたのだと思う。リフレッシュのような活動は、被災地だけに通用するものではない。住民の健康管理は多くの地域にとって課題となっている。

ーー被災してから最初の5年はリカバリー、次の5年はルネッサンスだとの話がありましたが、その次の5年はどういった期間になるのでしょうか。

おそらく復興作業は5年では終わらない。最初5年は色々な話し合いに費やされることになると思う。東北でもそうだと思うが、色々なところで「これをやるには、このプランが必要だ」という協議が頻繁に行われているところから、いよいよそうした復興プランを実行に移す段階になっていく。

そこから先は、人々がそこへ移住して住み続け、投資し続けるような街や地域を作るという、本当のゴールに向かっていく作業になる。そうした地域づくりを進めるうえで、BCCのような非営利団体が重要な役割を果たすと思う。今後はリフレッシュ以外のプロジェクトも持ち上がっている。私たちのゴールはこうしたプロジェクトを考えて、やり続けることだ。
 

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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