今回の戻り局面は持ち株を処分する好機だ 株価の大幅上昇は乱高下の一部に過ぎない

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つまり、「上がれば全部上がるし、下げれば全部下げる」という値動きである。2006年までこのような極端な値動きになることは年に10回もなかった。しかし、2007年に32回となり、2008年には52回、欧州債務危機が起きた2011年にはなんと70回も起きている。ちなみに、今年に入ってからはすでに10回起きており、これを年率換算すると60回を超える計算である。60回を超えたのは2011年だけであり、今年の株価の極端な値動きがいかに異常であるかということである。

これはインデックス運用の影響などもあるのだろう。ちなみに、株価が上昇し始めた2012年から15年までの平均は27回であり、その前の5年間の平均である50回を大きく下回っている。これらを見る限り、株価が不安定でかつ下落しているときには、極端な動きになりやすいといえそうである。

過熱感が高まったことも懸念材料

このような極端な株価の動きは日本株でもみられる現象である。上昇銘柄数あるいは下落銘柄数が極端な数になる日が多く、そのため騰落レシオも不安定な動きになっている。そのため、2日のような極端な上昇銘柄数が多い状況を喜んでばかりもいられない。結局は、下落基調の中の乱高下の一部に過ぎないということであろう。

25日移動平均線は上抜いたが、あくまで短期的な指標でしかない。長期下落トレンドは何も変わっていない。まして、円高がきわめて大きな重石として株価にのしかかっている。さらに、この日の上昇で過熱感が一気に高まってしまったことも、短期的には懸念材料である。数日間は上昇するかもしれないが、結局は短命に終わろう。

繰り返すように、ドル円の水準から見ると、日経平均株価の割高感がきわめて強い。したがって、今回の戻り局面を上手く利用して、持ち株を売り切ることが肝要である。そうすれば、その後の下落局面でゆっくりと買い場を探ることができる。

一部の証券会社がようやく重い腰を上げ、企業の業績下方修正に手をつけ始めたようである。しかし、まだその動きは始まったばかりである。見通しが出揃う過程で、現在の株価水準がいかに割高であったかを後に知ることになるのだろう。しかし、それからでは、あまりに遅い。今回の戻り局面を逃さずに持ち株処分の好機ととらえ、その後の押し目でゆっくりと買うための資金を捻出しておきたいところである。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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