繋ぐことで生まれる「APIエコノミー」の衝撃 Uber、FinTechを支える新・経済圏とは?
このように位置情報をキーにAPI連携するビジネスを増やしていくことで、Foursquareは、位置情報サービスの基点となることも可能となるだろう。
自社ビジネスをAPIとして公開したり、それを利用したりするAPIエコノミーでは、ビジネスのアジリティ(俊敏性)を高めることはもちろん、オープンイノベーションの促進にも貢献する。
FinTechにも広がるAPIエコノミー
APIエコノミーの潮流はさまざまな業界へと広がりつつある。特に、金融業界を賑わせているFinTech分野では顕著である。
バンクオブアメリカ、BBVA、mBankなど先進的な金融機関では、自社の金融ビジネスの一部をAPIとして公開し、外部の開発者に新たなサービスの開発を促す取り組みを積極的に行っている。
シティバンクも、2014年に「Citi Mobile Challenge」という世界規模のオープンイノベーションの取り組みを立ち上げ、すべての参加者に「Citi’s digital banking APIs」へのアクセスを許可。自社だけでは難しかった革新的なサービスの開発を推進するほか、ウォルマートやベストバイが公開するAPIと連携したアプリケーションも提供するなど、先進的な取り組みを続けており、日本の金融機関にとっても参考になる点が多い。
一方、標準化の動きも活発化している。2015年10月には、欧州委員会がPSD2(Payment Service Directive 2)の中で、顧客の口座にアクセスできるAPIの公開を金融機関に義務づけるXS2A(Access to the Account)を発行し、2015年11月には、RESTful APIという形式の仕様を記述するフォーマットの標準化を推進するOpen API Initiative(OAI)が、3Scale、Apigee、Capital One、グーグル、IBM、Intuit、マイクロソフト、PayPal、Restlet、SmartBear Softwareらによって結成され、2015年12月には、英国政府が支援するOpen Data InstituteのOpen Bank Working Groupが「Open Banking Standard」というレポートを英国財務省に提出している。
かりに、これらの標準化活動が順調に進めば、2020年以降、企業各社が公開したAPIを、利用者の状況や目的に合わせて動的に組み合わせるようなサービスも登場するだろう。たとえば、ニューヨーク旅行を計画しているならば、航空会社やUber、OpenTable、Foursquare、ブロードウェイ予約など、必要となるオープンAPIを自動的に提案して、組み合わせ、利用可能な状態にするサービスが登場することも考えられる。
もっとも、APIの公開は簡単ではない。セキュリティ、認証、トラフィック管理、利用制限、課金、性能管理、ポリシー管理、テスト環境の用意など、検討すべき課題は多岐にわたるためである。
しかし、自社だけでは生み出せない革新的なサービスを迅速に提供し、顧客満足度を高めるためには、従来と同じやり方では難しい。来るべきAPIエコノミー時代に向け、日本企業も自社ビジネスのAPI公開に向けた取り組みを具体的に検討する時期にさしかかっていると言えるだろう。
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