私のサービス論 「サービスの基本は『ファミマシップ』です」
サービスがサービス産業の専売特許であったのははるか昔の話。今やサービスは、あらゆる産業にとって最優先課題になっている。日本の名だたる企業のトップたちは、「サービス」をどう定義し、具体的にどのようなサービスを実践しているのか?各社のトップに聞いた。
(『週刊東洋経済8月11日・18日合併号の特別版』)
Q.御社にとって、「サービス」とは何ですか?
ファミリーマートでは、「あなたと、コンビに、ファミリーマート」のスローガンを掲げています。その心は、『お客さまと心理的に近い存在となるべく、ホスピタリティあふれる行動を通じてお客さまに「気軽にこころの豊かさ」を提案し、快適で楽しさあふれる生活に貢献する』ということです。
これは、全社横断型のプロジェクト『ファミリーマートらしさプロジェクト』活動において、2006年に制定した基本理念のなかの、『ファミマシップ』に則って進めています。『ファミマシップ』とは、「お客さまの期待を超えよう」「仲間を信じ共に成長しよう」「豊かな感性を磨こう」「挑戦を楽しもう」「世の中に向って正直でいよう」ということです。また、当社ではS&QC(サービス、クオリティ、クリンネス)という小売業における基本を永続的に追求しています。一般的には「QSC」という順に言うことが多いですが、ファミリーマートではあえて接客などの「S(サービス)」を前に持ってきています。
ただ、S&QCはあくまで基本であり、小売業を営む上での大前提のため、ここに「ホスピタリティ(おもてなしの気持ち)」を付加することを全社員、加盟店に説いています。
Q.御社のサービスの具体例を教えてください。
「ホスピタリティあふれる接客」「お客様のこころに響く商品の開発」。これらはあくまで基本概念であり、ファミリーマートでは、各加盟店、各担当がそれぞれ小さなことでもお客様にご満足いただくための活動に取り組んでいます。
例えば、小さなお子様がお使いで来られた時には、「おつりを落さないように小さな袋に入れてあげる」、「病院近くのお店では、車椅子のお客様用に入口付近にインターホンを付け、押していただければスタッフがお手伝いする」、または、「地域のボランティア活動への参加」「養護施設の子ども達へのプレゼント」など、直接的に店舗の利益に結びつかないことでも、地域密着のコンビニエンスストアとして様々な取組みを行っています。これらももちろん、各加盟店、個人が『ファミリーマートらしさ』とは何かを考えた上での、『ファミマシップ』に基づいた行動です。
Q.サービスを定着・向上させるために、どのような取り組みを行っていますか?
ファミリーマートでは、全国7000店、およそ12万人以上のストアスタッフの生産性向上を体系的に図るため、独自の従業員育成システム「SST(ストアスタッフトータルシステム)」を導入し、活用しています。SSTは「集めて・育み・報いて・楽しませる」の4原則に基づいて構成されており、「スタッフトレーナー養成講習会」の開催や「ストアスタッフ資格制度」(初級・中級・上級)等により、S&QCレベルの向上、発注の分担化、ストアスタッフのモチベーションアップ等を推進しています。
スタッフトレーナーは従業員が務め、従業員が従業員を教えることにより、業務レベルの継承を行っています。「ストアスタッフ資格制度」では、初級は基本接客、業務、中級で発注業務、上級では店長代理として働けるようになります。上級になると、一定の条件を満たせば、独立してFC加盟者になれる優遇制度もあります。
また、最終決定は加盟店になりますが、各資格によって時給のアップなどのインセンティブをつけるよう、本部から推奨しています。また、遠隔地の加盟店には、トラックの荷台を改造した移動研修車「SQC号」を用意しています。トラックの荷台に、カウンター設備や、発注端末などがあり、接客トレーニングのほか、実務的なトレーニングもできるようになっているのです。
上田準二(うえだ・じゅんじ)
1946年秋田県生まれ。山形大学文理学部卒業後、伊藤忠商事入社。同社食料部門長補佐兼CVS事業部長を経て、2002年ファミリーマート代表取締役社長に就任。
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