日本初の病院PFI事業 わずか5年で破綻の顛末 《特集 病院・診療所》

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 オリックスを中心とした民間企業グループ11社は、病院建設や医療周辺業務の運営(30年契約)を請け負うのに際し、「PFI契約書」を自治体側と締結。その中で、23・4%以下を目標として材料を調達すると記していた。ところがその後、この数値を「約束」と見なすか、「単なる数値目標」と見なすかで対立。「十分な根拠や実現の意思と見込みもなく提案されたのではないか」と山崎企業長がSPCの間渕社長に今年2月に文書で申し入れた。

契約書の文面には「目標」と書かれているが、自治体側が「約束」と見なすのには理由がある。PFIのコンペでは、直営の場合と比べてどのくらい低コストで運営できるかを競う。そのため、提案で掲げられた数値は単なる目標とは言い切れない。

その一方で、目標を達成できなかった場合のペナルティについても明記していなかった。SPCに対する委託料は6年間固定されており、「コスト削減への努力が足りなくても、一定額が支払われる」(企業団事務局)というありさまだったのだ。

また、SPCに出資する企業がSPCから医療周辺業務を再委託していることから、病院の利益とSPCの利益が相反する構図もあった。

高知医療センターは、10年4月以降、県と市の直営に戻る見通しだ。いったい、病院PFIとは何だったのか、責任の所在を明らかにする必要がある。

(週刊東洋経済)

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