なぜ欧米で市場の不安心理が収まらないのか 原因は金融規制強化による流動性不安だ

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リーマン・ショックはそれまでに金融機関が過剰なリスクを取っていたために起きたという反省から、グローバルに金融規制が強化されてきた。世界の大規模金融機関を悩ます規制の一つに流動性カバレッジ比率(LCR)やレバレッジ比率規制といったバランスシート規制がある。

これらは、大規模金融機関に対して、バランスシートの縮小と流動性の確保を要求するものであり、金融システムの安定性に寄与するものではある。しかし、当該規制が世界で最も規模の大きな債券市場の流動性を低下させているとなれば、なんとも皮肉である。

金融規制によって市場の流動性が不足している

証券取引所を経由した取引が主である株式市場とは異なり、債券市場は基本的には店頭取引(相対取引)が主である。このため、証券会社の債券トレーディング・デスクが、株式市場における証券取引所と同じような役割、すなわち、顧客間の取引の仲介を行っている。

しかし、債券の売り手が売りたいときに買い手が存在しないことがある(というかそのほうが一般的である)ので、証券会社は自らがフェアと思う価格(株式取引における売買手数料にあたる「売買価格差(ビッド・アスク・スプレッド)」を考慮した価格)でいったん自らが債券を保有し、債券の買い手を探すのである。

つまり、債券の売買仲介において、一時的に自らのバランスシートに債券を保有することができるからこそ、売り手と買い手の間を円滑に仲介することが可能となる。このような債券市場における仲介機能を「マーケットメイク機能」と呼ぶ。

しかし、最近の金融規制強化によって金融機関のバランスシートが圧縮されているために、債券の保有量に制約が生じ、取引におけるマーケットメイク機能が低下しているのである。その結果、欧米の債券市場においては、債券の売り手が売りたいときに債券を売却しづらくなるような状態、つまり一種の流動性不安が生じている。

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