遅延も常態化、ドイツの鉄道が直面した異変 高い鉄道技術を誇る国で何が起きているのか
近年、ドイツ鉄道のコスト削減は著しい。車内サービスは簡素化され、夜行列車は2016年12月をもって完全撤退が発表されている。また導入されている車両も、年を追うごとに装備や内外装が簡素化されている印象を受ける。
2015年5月には、一部のマスコミが「ドイツ鉄道は近い将来、中国から鉄道車両を輸入する」と報じた。鉄道技術において、世界トップレベルの性能や信頼性を誇るはずのドイツが、中国から車両を輸入するとの報に、多くの人が首をひねった。
近年、ヨーロッパや日本の技術を取り込んだうえで純中国製品であるとうたい、価格も他国製品に比べて何割も安く、納期も早いと海外への売込みに躍起となっている中国だが、技術的な成熟度や信頼性は鉄道先進諸国にはまだ遠く及ばず、そもそも基幹部品の一部は海外からの輸入品に頼っているのが現状だ。
確かに、アジアやアフリカなど、先進諸国と比べ経済的に貧しい国々にしてみれば、中国製品は価格が安く、納期も早いなど、非常に魅力的なパッケージであることは間違いなく、価格と性能のバランスを考えた場合、これらの国々への受注競争で、欧州や日本が中国の後塵を拝することは十分考えられる。
安全面を見直す機会に
しかしドイツは、世界指折りの先進国なだけでなく、ヨーロッパ共同体の中でも経済的にもっとも豊かな国であり、自前の技術で300km/hで走る高速鉄道を建設し、保有する数少ない国の一つだ。鉄道車両メーカーのジーメンスとボンバルディアは、ドイツを鉄道製造の拠点にしており、多くの車両を納入してきた。
そんなドイツが、長年に渡って信頼性や安全性を築き上げてきた自国製品をかなぐり捨てて、コスト重視で鉄道車両を中国から買う日が来るのだろうか。エシェデの事故から、ドイツは何を学んだのだろうか。
企業にとって、利益を上げることもコスト削減も重要な課題だが、行き過ぎた利益の追求やコストダウンは、サービス低下のみならず、安全性や信頼性を損なう恐れもある。日本では、尼崎の事故を教訓として、あらためて安全の見直しを図り、今日に至る。
ドイツでも、今回の事故をきっかけとして、安全面を再点検するともに、行き過ぎた施策を見つめ直す良い機会になるのではないのだろうか。
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