アジア太平洋地域の航空会社は需要減で不振が続く《ムーディーズの業界分析》
VP シニアアナリスト イアン・ルイス
AVP−アナリスト 澤村 美奈
ニュージーランド航空は、5 月の旅客数が前年同月比で10% 減少したと発表した。これは、アジア太平洋地域の航空会社が世界的な需要の落ち込みにより継続的な下方圧力にさらされていることを示している。これまでのところ、ニュージーランド航空の格付けBa1 の見通しは安定的を維持している。一方、ムーディーズは6 月15 日、需要減による収益性の悪化とレバレッジの増加により、全日本空輸(ANA) の格付けBaa3 を引き下げ方向で見直しの対象としている。
航空業界は百年に一度の深刻な世界景気後退と、41 年ぶりのインフルエンザ大流行という二重苦に直面しており、向こう12~18カ月間で事業環境が急速に改善する可能性は低い、とムーディーズはみている。国際航空運送協会(IATA) は、過去3カ月内に、世界の航空業界全体の2009 年の損失予想を、それまでの2 倍の約90 億ドルに修正した。この3 分の1 以上をアジア太平洋地域が占める。
ニュージーランド航空と同様、ムーディーズの格付け対象の他3 社、オーストラリアのカンタス航空(Baa2/ 見通し安定的)、ANA、日本航空インターナショナル(JALI、Ba3/ 見通しネガティブ)も、旅客数が前年比で減少している。表が示すように、日本の航空会社の4 月の旅客数と有償旅客キロ(RPK) は、国内線で12~14%、国際線で8~10% 減少した。中でも、収益性の高いビジネスクラス旅客と個人旅行客が大幅な減少を示した。
日本では景気低迷により、国内線と国際線の旅客数とRPK が落ち込んでいるが、国内線の落ち込み幅がより大きい。ニュージーランドとオーストラリアの状況は日本と逆になっている。これまでのところオーストラリアはOECD 諸国で、景気後退に陥っていない数少ない国の一つである。