TPPには日本の法体系を破壊する「罠」がある

知的財産権を巡る合意の巨大インパクト

そもそもアメリカは、他国との貿易協定が承認されたとしても、他国の国内法や制度をチェックし、その変更を要求することができるとしている。またアメリカの都合だけで、協定の発効を遅らせることも可能だ。パナマとのFTAでは、パナマが2007年7月11日に議会承認したにも関わらず、協定が発効したのは2012年10月31日。実に5年以上も待たされた。

そしてアメリカが「十分」とするまでは貿易協定を発効させない。すなわち相手国が議会で承認を得た以降も、アメリカの意思で協定内容を変えることができるということになる。

チリ、オーストラリアの先例あり

この承認手続きはCertificationと呼ばれ、1988年のカナダ・アメリカFTAで導入されたのが最初で、引き続き1993年のNAFTAに適用されて定着した。

このCertification により、チリとオーストラリアがアメリカとのFTA締結後に国内法を改正させられたことを、2月19日の衆院予算委員会で民主党の福島伸享議員が述べている。そういう現状なのに、石原大臣のように「我が国の具体的な法制度設計は、我が国に委ねられている」で通るのか。福島氏は日本の法体系もその危機にさらされていると警告している。

「我が国の公の秩序に反するんですよ。つまり日本人の美徳や古くからの伝統に反することが、TPPによって変えられようとしているんですよ」

そもそもTPPはその交渉過程が明らかではない。甘利明前TPP担当相は自身のブログで、多くの時間を事務方を排して1対1で交渉してきたと述べている。にも拘わらず、後任の石原大臣への引き継ぎは電話で20分ほど話しただけなのだ。

「TPPについては特別委員会を設置して、真剣に審議しなくてはいけない。そのためには交渉過程がわからないと、どうしようもない。交渉過程を開示すべきだ」

このように民主党の玉木議員が主張するのは、石原大臣のみならず、岩城光英法相の答弁が心もとないからだ。野党議員の質問に対して岩城大臣はただ、「いままさに検討中」「立法の段階で明らかにしていきたい」などと繰り返すばかり。「将来の同様の行為の抑止を目的としたこの8項に規定する損害賠償は明らかに1997年の最高裁判決に違反するし、TPP協定の中身を忠実に守ろうとすると、我が国では導入できない規定に署名してきたことになるのではないか」という玉木議員の質問にも、「各締結国の一定の裁量が与えられるものと承知している」と答えるのみだ。

自民党は2013年の参院選で「農林水産分野の重要5品目の聖域を最優先し、それが確保できない場合は脱退も辞さない」と自民党政策集(Jーファイル)に記して闘った。しかし安倍晋三首相は「Jファイルは公約ではなく、目指すべき政策である」とし、事実上それを反故にしてしまった。

アメリカのいいなりになって、なし崩し的に国内法が変えられていく状況を座視していていいののか。日本の運命を変えるTPPについて、今後の国会審議を慎重に行うべきだろう。
 

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