"行間"を読ませる「トランプ話法」の功罪 「省略三段論法」というレトリック

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米ベイラー大学で修辞学を研究するマーティン・メドハースト教授によれば、エンテュメーマは聴く側に強い影響を及ぼしうるという。「心理的に相手を巻き込むことができ、相手が自分自身を説得するようにすることで、説得しやすくなる」と同教授は指摘する。

だが、こうしたレトリックにはリスクも伴う。特に、不完全な形で示した考えがあまりにも曖昧なせいで、聴く側が、肯定的もしくは否定的いずれかの言明で補ってしまう場合は危ない。

中国が米国を搾取している?

たとえば1月29日の演説で、トランプ氏は、中国が米国を搾取しているという見解を表明した。

「中国はわれわれの雇用を奪い、基地を奪い、金を奪ってきた。だが、私は中国が大好きだ。私は彼らとうまく付き合っている。私はああいう連中と、中国とビジネスをやっているし、彼らも私にも同意している。彼らは──できない(They can’t --)」と語った。

ロイターがこの演説の映像をニューヨーク市立大学ハンター校で公共政策を受講する学生グループに見せたところ、これに続くトランプ氏の次の言葉が何であったはずかという点で意見が割れた。

政治学と哲学を学ぶ学生は、未完で終わっているトランプ氏の見解を「彼らには、われわれがこれほど知的に劣っているとは信じられないだろう」であると推測。

やはり政治学を学ぶもう1人の学生は、「仕事上の取引があるのだから、中国人はトランプ氏に反対できるはずがない」と解釈した。

もっとも、こうしたレトリックを活用しているのはトランプ氏だけではない。

昨年9月に行われた「ローリングストーン」誌のインタビューで、トランプ氏はフィオリーナ氏の容貌をあざけってこう言った。「あの顔を見てみろ。誰が投票するだろうか。あれが次の大統領の顔だと想像できるか」

一部の読者には、「フィオリーナ氏は醜い」とトランプ氏は考えているということが伝わった。しかしトランプ氏は後にそのような趣旨ではないと否定した。

フィオリーナ氏の側でも、やはり彼女なりのレトリックで反撃した。「国中の女性がはっきり聞き取っている。トランプ氏が何を言おうとしたかを」と。

(Emiliy Flitter記者)(翻訳:エァクレーレン)

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