崖っぷちの日本航空、政府監視下で再建へ
直近6年間でJALが三度の営業赤字に沈む中、全日本空輸(ANA)は一度も営業赤字に陥らなかった。JALは国際線比率が高く、燃料代高騰やイベントリスクを受けやすい側面がある。それを考慮しても、時代遅れのジャンボ機の大量保有や、旧日本エアシステム(JAS)との経営統合で八つに分断された労働組合問題に心労を費やした結果、路線や人員リストラが遅れたことは否めない。
再建のラストフライト
ANAは「危機対応融資は使わない」(伊東信一郎社長)と言明。市中銀行からの借り入れで手当てし、コミットメントライン1000億円も温存する余裕ぶりだ。またホテル売却などで航空事業への集中化を強め、最新の航空機購入を着々と推し進めている。かつて8000億円以上あった売上高の差も5000億円台(JALの売上高は約1・9兆円)まで縮め、すでに時価総額は凌駕している。
だが、国交省幹部は「日本のフラッグシップカンパニーはあくまでもJAL」と言い切る。今回の緊急融資に絡んでも、地方の不採算ネットワーク維持を強く求めており、親方日の丸の側面が色濃い。
巨額の赤字が響いてJALの株主資本比率は10%まで下落した。足元の旅客数も新型インフルエンザの影響で予測を下回っており、一段の財務悪化が懸念される。民営化した1987年以前に時計の針が戻され、再び国有化の道をたどるのか。具体的な経営改善策は今夏に打ち出す。緊急融資3度目の正直に向け、再建の“ラストフライト”となる。
(冨岡 耕 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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