ショッピングモールは下流化の象徴じゃない 東浩紀×大山顕「これは世界統一の文法だ」
まずはシンガポールのヴィヴォシティ。僕はここを訪れたときに、実はモールにこそ、土地のローカルなものが現れるのではないかと思ったんですね。
モールこそがローカル
大山顕(以下、大山):同感です。2013年の夏に、バンコクに海外旅行に行きました。たんなる観光旅行で、旅情的な写真もいろいろ撮ったんですが、結果的にいちばん面白かったのがモールだったんです。
これは速水健朗さんと対談したときに出た話なんですが、ファミリーレストランにはファミリーがいない。仕事中に休憩している営業マンとか、ダメ学生とか、打ち合わせ中の編集者みたいなひとばかり。ではファミリーはどこにいるのかと言えば、みんなフードコートに行く。ファミレスで小さい子が騒ぐと、「ほかのお客様のご迷惑になりますので」と怒られてしまう。
それに対してフードコートだと、周りもお母さんだらけだし、隣にアンパンマンのデカい遊具があったりして子どもが騒いでも問題ない。僕には子どもはいませんが、母親が長年車椅子生活を送っていて、スロープやエレベーターがないところにはまず行けないので、このありがたさはよくわかる。
それとバンコクに行って驚いたのは、屋台の食事では意外と満足できなくて、モールに行ったら地元の料理がいちばん充実していたことです。いるのもみんな地元の人で、食べ物も美味しい。
東:ヴィヴォシティはまさにそういうところです。シンガポールの本土の南にセントーサ島という観光地があって、本土からセントーサへつながるセントーサ・エクスプレスの駅舎がそのまま巨大モールになっている。
設計は伊東豊雄が手がけています。内装がよかったです。
僕が行ったのは2007年なんですが、シンガポールに行ってまずはインド人街やら中国人街やらマレー人街やらを回って、観光したりご飯を食べたりしました。
観光ガイドでは「ホーカーズ」と呼ばれる屋台村で地元料理を食べるのが定番ということになっているのですが、実際に行ってみると観光客か老人しかいない。逆に最終日近くになってヴィヴォシティに行ったのですが、こここそ行くべき場所だったと思いました。
この写真は屋上の子ども向けのスペース。こちらに写っているのが「フードリパブリック」というフードコートです。内装はシンガポールの昔の屋台街を再現しています。
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