ショッピングモールは下流化の象徴じゃない 東浩紀×大山顕「これは世界統一の文法だ」
地元のシンガポール人たちは、ホーカーズではなく、まさにこういうところでご飯を食べているんですね。これには衝撃を受けました。地元の人たちの生活を見ようと思ったら、ホーカーズではなく、ショッピングモールに行くべきだったんです。東京に来て浅草に行っても東京の生活がないのと同じです。豊洲のららぽーとを見に行ったほうがいい。モールにこそ地方のリアリティがある。
大山:リアリティということに関しては、こんなに薄っぺらなものにリアリティだなんてとんでもないといわれます。しかしでは浅草は本物なのか。
東:歴史的保存地区になっている段階で、すでに本物ではなくなっていますよね。
大山:東さんに聞いてみたいと思っていたのが、「本物」ということについてなんです。たとえば、大阪城の天守閣。よくキッチュだと言われており、がっかりしたという声が絶えないのですが、実は大阪城の歴史をひもとくと、今の天守閣がいちばん歴史が長いんです。1931年に竣工して、すでに80年以上経過している。豊臣、徳川時代にはしょっちゅう焼け落ちていて、何度もその当時のテクノロジーで再建されてきた。
それが昭和に入って、その当時のいちばん合理的なやり方で再建されているので、コンクリートづくりになっているわけです。でもそれこそが正統なのかもしれない。ショッピングモールも、あと20年もすれば正統なものになるのではないか。ヴィヴォシティはできて何年くらいでしょう。
東:2006年オープンなので、今年で11年目ですね。
大山:なるほど。たとえば、日本最初のショッピングモールのひとつである玉川タカシマヤは1969年にオープンしているので、開業から40年以上が経過しています。こうなってくると、下手な商店街よりも古い。つまりこちらのほうが正統だ、と言えてしまう。
東:まさに僕たちはそういう感覚を持ってますね。
統一された文法
東 次はドバイ・モールです。このモールのポイントを一言で言うと「アラーがいても消費はする」となるでしょうか。
まず、ドバイ・モールを上から見下ろすとこんな感じになっています。
周りは完全に砂漠なんです。夏はものすごく暑い。僕が訪れたのは9月で、気温はだいたい40度だったのですが、このくらいではまだまだらしい。5月や6月には最高気温が50度近くに達するようです。そんな気温では外にいられないので、モールに行くしかない。
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