温室効果ガス15%削減の説得力、科学的根拠は置き去り
はたして国際交渉のカギとなるのか--。麻生太郎首相は、2020年までの温室効果ガス排出量を、05年比15%減(90年比8%減)とする中期目標を発表した。
この目標は、12月にデンマークのコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に向けたもの。同会議では、13年以降の温室効果ガス削減に向けた国際的枠組み(ポスト京都議定書)が決められる。政府の検討委員会は、会議に向け05年比4%減から30%減までの6案を示して検討を重ねてきた。各界の思惑が絡み合う中、最終的に麻生首相が決着に持ち込んだ格好だ。
議論の出発点が不一致
今回の発表を受けて、環境省や環境団体と経済界との間では評価が二分した。
環境団体側からは「政府の目標は甘い」(NPO法人「環境文明21」の加藤三郎共同代表)という声が多い。その根拠には科学的合理性がある。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、深刻な温暖化の被害を防ぐために、50年までに世界全体のガス排出量の少なくとも50%削減が必要とする報告を出した。20年までの中期目標においても先進国全体で25~40%の削減が必要というシナリオを描き、EUはそれを受けて90年比20~30%削減する方針を決定。加藤氏は「IPCC報告は科学的な調査であり、日本もEUと同程度の削減率が必要」と指摘する。
だが、日本経済団体連合会(経団連)の見方は異なる。経団連の岩間芳仁環境本部長は、「25~40%というシナリオは国際間で合意されたものではない。日本がその数値に合わせると、工場の海外移転など経済の混乱を招きかねない」と懸念する。