恐慌脱出 危機克服は歴史に学べ 安達誠司著 ~実証データで歴史を押さえ、斬新な切り口で分析


 本書では氏の切り口だけでなく、語り口までが鋭くなっている。政権交代に期待をかけようにも、日本の民主党は金利の引き上げと円高を歓迎しており、かつての浜口雄幸・井上準之助の民政党の二の舞いを演じかねない。この意味で日本の政策的選択肢は絶望的に狭い。そして経済論壇では全共闘世代の経済評論家たちが反金融・反米思想を掲げ嬉々として「アメリカ金融帝国の終焉」を語るか、これまでの「構造改革」論を撤回して「懺悔の書」を書く始末である。

だがそういう論壇にも変化がみられる。これまで円安と低金利の弊害を説いてきた経済評論家は危機対応を説き、日銀のゼロ金利政策や量的緩和政策を批判してきた経済学者は、アメリカがそれをしても批判するどころか礼賛している。こうした変化がいつもながらの風見なのか、それとも……。「危機は、経済論壇にも確実に迫っている」。かつて見事に予言をあてた安達氏のこの予言もあたるのだろうか。

あだち・せいじ
エコノミスト。1965年生まれ。東京大学経済学部卒業。現在、金融機関調査部勤務。著書に『昭和恐慌の研究』(共著、経済図書文化賞受賞)、『脱デフレの歴史分析』(河上肇賞受賞)など。

東洋経済新報社 1890円 256ページ

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