原油安で「得をする国」「損をする国」はどこか

産油国の独裁者たちにドミノ倒しが迫る

では今後、原油安はどの国にどのような影響をもたらすのだろうか。

原油安で思い浮かぶのは、1998年に起きたロシア財政危機である。当時、主要輸出品だった原油の価格が下落したことに伴い、ロシアは財政が急速に悪化し、デフォルト(債務不履行)に追い込まれた。結果、エリツィン大統領(当時)は辞任し、プーチン大統領に再建が託された。

今回も同様の道をたどる国が出るのだろうか。それを予測するうえで指標となるのが、国の財政的基盤と「回復力」「柔軟性」である。

原油安に直面した際、多くの国でまず必要なのは、経済へのショックを和らげる財政と政治のシステムである。確固たる財源と金融制度を持っているか、国民のフラストレーションを抑えるだけの政治システムを持っているか。そうした条件を備え、回復力と柔軟性を持つ国は良い。だがそうではなく、石油に依存する国は困難に陥るだろう。

産油国の独裁者には悪夢の年に

この指標を用いると、評論家たちにとっては意外な予測が成り立つ。彼らが好むのは、サウジアラビアの君主制の崩壊を予測することだ。しかし同国は世界で最も低コストな産油国であり、財政も安定している。さらに政治システムも頑強だ。すなわち回復力と柔軟性を併せ持った国であり、原油安に伴い国家が崩壊する可能性は低い。

一方、原油安に伴い混乱に陥りやすい国の代表格がロシアだ。プーチン大統領は強権を振るっているが、財政面では盤石とはいえず、回復力、柔軟性を備えた国とはいいにくい。こうした弱みをプーチン大統領は隠そうとするだろうが、ある時点から隠し通せなくなるだろう。

ベネズエラやナイジェリアといった、経済基盤が脆弱な国々も原油安の打撃を免れないだろう。また今後、さらなる痛手を被ると予想されるのが、中央アジアのアゼルバイジャンやカザフスタン、トルクメニスタンといった独裁国家だ。石油輸出の恩恵にしがみつく独裁者にとって、16年は悪夢のような年になるかもしれない。

週刊東洋経済2月20日号

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