世界遺産で見る、宗教で栄えた国・滅びた国 神とカネによる王朝の興亡を読み解く!

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そこで、ピラミッド建設という政策が採られます。図のように、富裕層は、年貢とは別に、貯め込んだ余剰穀物を王に寄進します。その見返りに、王に土地所有を保証させ、新たな領地を併合していきます。

王は、富裕層から余剰穀物を得て、それを貧困層に支給します。そして、貧困層をピラミッド建設に従事させます。

ピラミッドのような巨大建造物は王の威信を強めました。王の威信にあやかり、土地を得ようとする富裕層が、進んで余剰穀物を王に寄進するようになります。

カネ余りならぬ、穀物余り

ピラミッド建設を中核とする、余剰穀物を循環させる経済システムが富の偏りを防ぎ、貧困層を底上げすることに貢献しました。古代エジプトにおいて、貨幣経済は未だ、定着していませんでした。マネーの代わりに、穀物が経済循環を促進する媒介機能を担っていました。

豊作が続いたエジプトでは、カネ余りならぬ、穀物余りが生じており、富裕層はダブついた穀物を王に寄進することで有効投資し、さらに自らの勢力を拡げようとします。こうした経済循環を促す政策の一環として、巨大ピラミッドは建設されたと考えられるのです。

従来、ピラミッドは、王の墳墓と考えられて来ましたが、最近では、それを否定する説もあります。いずれにしても、ピラミッドは宗教的な意味合いを強く持っていました。古代エジプトでは、太陽神ラーが信仰されており、ピラミッドは、太陽神に捧げる巨大なモニュメント、または、太陽に至るための巨大な階段と考えられます。

ピラミッド建設に従事する貧困層の労役は、過酷なものでした。ピラミッド建設に従事した者は、来世を神によって、約束されるという宗教的な信念を持ち、困難な労役にも耐えることができました。

ピラミッドは、王の個人的な墳墓ではなく、人々の信仰の公的な象徴として、認識されていました。そうでなければ、あれ程の巨大で精緻な建造物を、人々が結束して造り出すことはできません。宗教信仰は人や社会を動かす重要なインセンティブでした。

王は人々に、ピラミッド建設によって、物的な食糧と、心的な信仰の2つを与えました。そして、この2つが両輪の輪として、古代エジプトの経済社会の成長を促していくことになります。

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