東京アッパー層の結婚はしがらみの中にある 東京の「婚活事情」最前線<5>
幼少期から麻布や白金、広尾といった優雅なエリアで育ってきた者たち。
財閥や政治家の御曹司、大病院や旧華族の名家の娘。ドラマや小説の登場人物のような肩書の人間が至る所に本当に存在する街。たいがい彼らは地元の友人と強い結束を持ち、またその親同士も親密だったりする。そして生まれた病院から幼稚園、大学、そして就職先まですべて同じコミュニティに属している者も多い。
だがしかし、彰は家柄だけでなく本人も相当なインテリで、東大を出て海外でMBAを取得、さらに自身でも様々なビジネスを手掛けているという相当ヤリ手の実業家である。
「でもやっぱり俺はこの辺が好きなんだよね。友達もいるし何でもあるしさ、比較的綺麗な街じゃん。まぁ俺は地元だし、当然落ち着くよ。」
正直、地方出身者とは結婚できないなぁ・・・
「結婚?したいよ。 まぁ、港区生まれじゃなくても仕方ないけどさ、地方出身者は俺ちょっと難しいかなぁ。あと、ぶっちゃけ家にいてくれる人がいいね。同居はさすがにないけどさ、うちの親とも仲良くしてもらわないと困るし。それとそれなりの大学出てくれてて、食事のマナーが身についてる子がいいな。ワインを二人で1本空けるくらいお酒飲めると尚いいんだけどさぁ。あ、誰かいない?」
その歳にしては後退した額をさすりながら答える。中肉中背。ずんぐりとした背中。スタイリスト付きで選んだという全身ブランドで固めた洋服とカラフルで大きな時計は滑稽にも見えるが、それでもこの堂々とした傲慢とも見える雰囲気のせいで、この一流ホテルにいても一目で上顧客だろうと分かってしまう。特にこのエリアでは、男は外見など関係ない。財は強しなのだ。
「超美人とかじゃなくてもいいけど、清潔感はないとなぁ。あと気が効いて空気読める、物分かりが良くて家庭環境円満な子がいいな。確かに男は女性と違ってタイムリミットはないけどさ、そろそろ家庭持ってないとね。子供も作らないといけないし、1年以内が目処かなぁ。嫁探ししないとなぁ。」
彰の人生に不安要素やリスクはどこにもない。