東京アッパー層の結婚はしがらみの中にある 東京の「婚活事情」最前線<5>
家柄に加え、財力も十分過ぎるほど。あとはそろそろ安定した家庭を作っておくための嫁を探す。
彰は現在恋人はいないらしいが、綺麗な女を連れてデートをしているという情報は度々耳にする。
「ああ、それ瞳のこと?俺がああいう系の子に本気になると思う?彼女じゃなくても一緒にいたいとか言うから、たまにいるだけだよ。旨い店行くときに一人ってわけにもいかないしさ。」
瞳は27歳で大手雑誌社に勤め、学生時代から読者モデルとして多くの雑誌を飾っていたちょっとした有名人だ。小さな可愛い顔と愛らしい笑顔。流行の服やメイクを自然に取り入れるセンスの良さ。愛嬌もノリも良く、東京の恋愛市場でも上位に属するタイプの女。
「大学からこの辺に出てきてキャピキャピしてる感じの女、俺ダメなんだよね。メシも軽くならいいけど、コース料理は難しいなぁ。酒飲めるのはいいんだけどね。俺らとはちょっと違うよ。ああいう子は30歳までにそこそこの商社マンとか捕まえて、いかに上手く若さを締めくくるかが勝負なんじゃないの。」
表情を全く変えずに、一瞬耳を疑うようなセリフをサラっと吐く。悪気はないのだ。悪気があれば逆に口には出せないだろう。ただ単に、彰にとっては生まれながらの当然の格差なのだろう。彼にとっては男女の市場価値も何もなく、きっと自分たちが何もかも中心な価値感の中で世界が動いている。
彰と同じコミュニティに属するまさに独身貴族と言える友人たちの多くも、同じように美女を周りに侍らせながらも30代半ばまで独身を貫いている。皆きっと、親や世間の目を満足させるような相手としか結婚はできないのだ。単純に、事実として。
数カ月以内に宣言通りの結婚
彰は宣言通り、その数か月後に結婚相手を見つけ、すぐに結婚した。
どこで見つけたのか、嫁は派手ではないが上品な顔をした鎌倉出身のお嬢様で、彰の後ろ三歩下がって微笑んでいるような女だった。彰にダメ出しされるような要素は見当たらない。これだと決めた彰の行動は早かった。日系の老舗ホテルで豪華な結婚式を早々に済ませ、嫁はその後まもなく妊娠したという。
さらに、彰のそこからのさらなる飛躍は流石としか言いようがなかった。新規で始めたIT系の事業を次々と成功させ、最近は雑誌などのメディアでも見かける。何もかも絶好調なのだ。