石油化学業界の再編がついに幕開け、需要低迷に海外勢が台頭
石油化学業界の再編がついに動き出した。国内最大手の三菱ケミカルホールディングスと同3位の旭化成は、岡山県水島地区のエチレン製造設備を統合すると発表。来年4月にも共同出資会社を設立したうえで、2012年までにいずれかのエチレン設備1基を廃棄する。
石化製品の基礎原料であるエチレンを統合する背景には、内需低迷に加え、新型設備を続々と稼働させている中東や中国勢の存在がある。
三菱ケミカルの小林喜光社長は、「汎用品が中心のエチレン系石化製品は、価格競争力のある中東勢とは対等に戦えない」と言い切る。そのため、塩化ビニルやスチレンモノマーなど、不採算の石化製品からの撤退を矢継ぎ早に打ち出した。今後は同社2大拠点の一つ、茨城県鹿島地区の設備統合も進める。
一方、旭化成は「現在の生産能力で継続運転することも含め検討中」(蛭田史郎社長)とし、現時点ではどの石化製品からの撤退も表明していない。だが、スチレンモノマーなど海外勢の生産拡大が見込まれる石化製品から縮小を迫られる可能性が高そうだ。
両社の設備統合によるエチレン生産能力の削減幅について、クレディスイス証券の澤砥正美氏は「水島地区で年間約40万トン。三菱化学の鹿島地区を合わせて最大年間82万トン程度」と見る。これは2008年末の実質国内生産能力770万トンの約1割に相当する。
それでも実勢には追いつきそうもない。09年度の国産石化製品の出荷量見通しは、エチレン換算で約470万トン(経済産業省調べ)にとどまる。つまり余剰分はまだ299万トンもあり、今回の統合効果を加味しても、依然大きな需給ギャップが残る。
業界ではこれまでも設備削減の必要性が叫ばれてきたが、遅々として進まなかった。「横並び意識の強さ」(三井化学の藤吉建二社長)ゆえに、先陣を切って大幅な能力削減を実施するメーカーが現れなかったのだ。加えて、中国特需に支えられ、問題が先延ばしにされてきた経緯もある。しかし三井化学も、より川上の出光興産とエチレン設備の効率化に向け動き出している。
最大手が統合に動いたことで、その再編機運がさらに高まるのは必至。「生き残りでなく勝ち残り」(藤吉社長)を懸けた動きが強まる。
(二階堂遼馬 =週刊東洋経済)
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